【連載】代官山 蔦屋書店 モーニングクルーズ誕生秘話(前編)大ヒット企画のはじまりは「立ち話」と「電話集客」

Jan 18,2019interview

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Jan18,2019

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【連載】代官山 蔦屋書店 モーニングクルーズ誕生秘話(前編) 大ヒット企画のはじまりは「立ち話」と「電話集客」

文:
TD編集部 青柳 真紗美

今回と来週、前後編でお届けするのは、代官山 蔦屋書店「クルマ・バイクコーナー」の清野龍太(せいの・りゅうた)さんへのインタビュー。毎月第2日曜の朝、開催される「モーニングクルーズ」にはこれまでに約5000台以上のクルマが参加したそう。そんなヒット企画が生まれた背景と、仕掛け人の清野さんの素顔をお届けします。

(前回の記事)「【Sneak preview】代官山 蔦屋書店 モーニングクルーズ誕生秘話」

お客様との立ち話から始まったモーニングクルーズ

2012年に始まり、既に70回を超えて開催されているモーニングクルーズ。きっかけはなんだったんですか。

清野:とあるお客様との立ち話がすべての始まりでした。
「ここでクルマが集まったら面白くない?」って話になって。じゃ、集めてみようか、と。代官山T-SITEがオープンしてから半年後くらいの時ですね。

社内で企画を提案した時は、なんというか……いや、ちゃんと確認は取りましたが、ざっくばらんに会話しながら「やらせてください。日曜日の朝、駐車場もちょうど空いてるし、いいですよね?」みたいな。そしたら許可が取れちゃった、みたいなかんじでしたね(笑)。
売り場のメンバーに対しては結構時間を取って「モーニングクルーズをやりたい」と話しました。
ただ……企画を通すためにお客さまの声を集めたり、売上予測をしたり、きれいな企画書を作ったり、そういうことはしませんでしたね。変な話ですけど、ちゃんと企画して細かくルールや目標も決めて、ってやってきたらこんなふうになってないでしょうね、おそらく。

第1回目の告知はFacebookだけでした。あとは常連のお客さんに声を掛けたり電話したりして、「こんなことやるんですけど来ません? 日曜の朝でお暇でしょ?」って(笑)。それで、20台ぐらいのクルマが集まりました。

電話!

電話しましたよ、普通に。今でこそ告知したら60台以上集まっていただける場所になりましたけど、最初は何台来るか私たちにもわかりませんでした。

最初からクラシックカーなどのテーマを設けていたんですか。意識していたターゲットとか。

いいえ、ノンテーマでした。もともとモーニングクルーズを始めた意図は「ただ気軽にお客様に集まってほしい」という、それだけだったんです。
自慢のクルマで集まって、クルマに乗っていない人にも集まってもらって、コーヒーでも飲んで、本でも見てもらって……楽しく話してもらえればいいなあ、ぐらいの感覚で。
そこからうちの本を読んでもらったり、他のイベントも見てもらったりして、お客様の世界が広がってくれればいいかなっていうぐらいの気持ちだったんです。

初期のモーニングクルーズの様子。ノンテーマでクルマが集まる場所だった。
(写真提供:代官山 蔦屋書店 クルマ・バイクコーナー ※編集部にて一部加工)

サービスエリアやパーキングエリアでもクルマが集まって語らう場が開催されていますが、この「知識の拡がり」という点で差別化できるのではないかと考えました。
書店という「知の集積」がそばにあり、そこからさらに世界が広がっていくことが大きな違いだと思っています。

今、70回を越えて開催させてもらっていますけど、個人的には毎回テーマなしでやるのも良いと思っています。
ただありがたいことに、クチコミで伝わって4回目で一気に(会場である駐車場が)満車になってしまって。それでテーマを設定したんですよね。

だから「こういう人に集まってほしい」というのもなくて。ギャラリーとして来ていただいたお客様も駐車場代を無料にしているのには、こういった理由があります。 

Facebookページは「書店のポップ」。企画した人の素直な気持ちを載せる

次はFacebookページの運用について。「クルマ・バイクコーナー」のページの投稿には味があってコミュニケーションも活発な印象。フォロワーは1万人を超えています。清野さんが全部担当していらっしゃるんですか。

フェアによっては別の担当者が書いたりするので、全部じゃないですけど、モーニングクルーズの告知文などは僕が考えています。

投稿を行う上で意識していることは。

Facebookページの投稿って「3行広告」だと思うんです。冒頭の3行で決まる。その3行に思いや伝えたいポイントを凝縮する。極論をいえば「めちゃくちゃ良かったです…!」、という一言でもいいのかなと思うこともありますよ。変な言葉遣いじゃなければ、よほどのことがない限り、お客様も反応しないので。
書店でいうなら「ポップ」ですね。
「つかむ」というのは意識するようになりましたかね。

気をつけていることなどはありますか。

お店というより、運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下「CCC」)全体の方針なんでしょうけど、CCCには基本的に「NOがない」んです。
もちろん赤字になることがわかっている企画が通る、みたいなことはありませんが、ちゃんと企画して上に相談したことで、NOを言われた記憶がほとんどないです。
モーニングクルーズの立ち上げについてはその中でもかなりざっくりしていましたが、それでも「どうやったらその企画が実現できるんだ」と話をするほうが多いですね。

全社を挙げて実施するような企画だったら、売上や集客にもよりシビアになるのでまた別になりますが、私たちのような店舗のスタッフが「これをやりたい」「だから作った」ときちんと説明すれば、「そうか、分かった」と言ってくれる社風です。
もちろん売上への影響は考えますよ。ただ「やってみないと分からない」って言ったら、多分「やってみたら」と言ってくれる会社だと信じています。
こんな会社だからこそ、他のお店でも独自の企画が生まれるんだと思います。だからFacebookとかで投稿する上でも企画した人の気持ちが素直に出てくるのかなという気はします。

お客様に提案したいのは「本の購入」よりも「ライフスタイル」
 

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