【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上vol.1 デザインが経営に与える4つの力

Jul 14,2017interview

#Goodpatch

Jul14,2017

interview

【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上 vol.1 デザインが経営に与える4つの力

文:
TD編集部

今でこそ当たり前になった「UI/UXデザイン」の重要性。しかし国内でこの領域の重要性、もっといえばデザインが与えるビジネスへの「効果」を投げかけたのは、今回インタビューした「株式会社グッドパッチ」だったといっても過言ではないかもしれません。
もともとデザイナーではなかった創業者の土屋尚史氏。彼がデザインの力に気づいたきっかけや、グッドパッチならではの「力のあるデザインの生み出し方」について聞きました。

デザインが持つ4つの力

今回のインタビューでは本質的に土屋さんがデザインやデザイナーについてどう考えているのか、核心的な部分に迫っていけたらいいなと思っていて。土屋さんのお考えがあればお伺いしてみたいです。

去年、社内でデザインとは何かっていうのを言語化してみたんです。
デザインの力って何だろう? と考えました。そのときに僕が挙げたのが全部で四つあります。

先ほどのエントランスを入ったところにある、 大きなカウンターテーブルとキッチン付きのスペース。
日々の雑談から朝礼まで、さまざまな意見交換がこのエリアで行われる

一つ目は『使う人の体験を向上させる力』。
例えば、二つの全く同じ価値を提供するサービスとかものがあったときに、しっかりとデザインされているものと、デザインされずにただ機能が使えるだけ、といったものがあったとしますよね。しっかりデザインされているものは、ユーザーに使いたいと思わせたり、ユーザー体験をより向上させることができる。ベーシックな価値は一緒なのに、いわゆる「デザインする」っていう、工夫みたいな話ですけど、その行為だけで何倍もの満足度を感じさせることができるんです。

二つ目は『違いを生み出す力』。
機能は一緒でもデザインの力によって差別化できるということです。この代表的な例が、先ほどお話したiPhoneとガラケーの比較ですね。多くの人が搭載されている機能やスペックなどを見てiPhoneを「日本では流行らない」と言った。けれど、ユーザーはデザインの部分に違いを見出し、iPhoneを選んだのです。

三つ目は『論理ではなく感情に訴えかける力』。
僕たちは必ずしも論理的・合理的に考えて良いものを選ぶわけじゃありません。言語化できなくてもハートに響くものを選びます。数字や論理は人を納得させるし共通認識はつくれるけれども、それだけで人は動かない。結局、感情で人は動くんです。その感情に直接訴えかけることができるのはデザインの力だと思います。これも2つ目の話と同じ、iPhoneの例がまさにそうですね。

「結局、感情で人は動く。 その感情に直接訴えかけることができるのはデザインの力」 と語る土屋氏

論理的・合理的に考えると、ガラケーを買ったほうが確実に良い。間違いない。
だけども、結局ガラケーたちは数年後にはもう完全にiPhoneに取って代わられてしまって。これは、やっぱりAppleのプロダクトのほうが感情を揺さぶったからだと思うんです。

揺さぶる。

そう。そこに作用するようなデザイン、プロダクトデザインだった、というのはあるかなと思います。

四つ目は『カオスからブレイクスルーを生み出す力』。
景気が停滞期に入ったり、商品がコモディティ化して同じような商品がマーケットにあふれているカオスな状態で一歩抜け出すためには、デザインの力が必要かなと。考えてみると、過去のイノベーティブなプロダクトは混沌の中から生まれたものが多いんじゃないかなと思うんですよね。もう検索エンジンビジネスは選り尽くされたと言われている時代にGoogleが出てきたように。

Yahoo!が出てきて、その後にポータルサイト、サーチエンジンが山のように出てきた。シリコンバレーでもGoogleが出てきたときは、VCなども「いまさら検索エンジンか」という反応だったんですよ。でも完全に後発だったGoogleが世界を変えたんですよね。
ポータブルオーディオプレーヤーもそうですよね。

そうですね。

iPodなんて最後発ですよ。散々ポータブルCDプレーヤー、MDプレイヤーがあって……。でも、iPodが出てきた瞬間に完全に駆逐されましたもんね。

力のあるデザインを生みだすための共通の価値観

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