【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上vol.2 デザイナーの領域を超える仕事

Jul 21,2017interview

#Goodpatch

Jul21,2017

interview

【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上 vol.2 デザイナーの領域を超える仕事

文:
TD編集部

グッドパッチ創業者の土屋尚史氏へのインタビュー。第二回は、UI/UXデザインが当たり前となった現代における「デザイナーの役割」の変化について聞きました。

9割のクライアントからの依頼を断った理由

少しいじわるな見方かもしれませんが、グッドパッチさんの良さとかスタンスを理解してデザインパートナーを迎える会社さんにはもともと、今の世の中に受け入れられるサービスを打ち出していけるような素地があるんじゃないかなと感じます。

そうですね。そもそも、先程挙げたようなクライアントが皆さん、同じ方向を向いて働ける方々だったというのは間違いなくあるなとは思っています。それができないとチームビルディングができないですからね。担当者や、できれば決裁権者に至るまで、デザインの価値に意識を向けてくれている人たち、デザインの重要性について理解してくれる人たちである、というのがかなり大事な要素だったと。
クライアントを選ぶ基準としてもそういうところを見ていていますね。開発体制や、開発プロセス、スケジュールにそもそも無理のある仕事は、お断りしています。

本当に課題を抱えている企業は、課題感すら感じていなくて。デザインの価値に意識のない経営者やチームを変えていくというところが一番難しい。

「さんちの手帖」は、ウェブメディア「さんち ~工芸と探訪~」からできた、旅のおともアプリ。
中川政七商店とのプロジェクト第二弾。サービスにおけるUX設計からUIデザイン、開発実装までを手掛けた
デザインに対する意識を変えていくところから始めないといけない。

そう、意識改革。難しいから僕たちが挑戦するんです。

デザインを担当する皆さんが、「意識改革」とか「本質に目を向けましょう」みたいなことを働きかけてチームを導いていくというのは今までになかった流れかもしれませんよね。今後のデザイナーの役割というか機能分担の在り方も変わっていくかもしれません。ただ、そこにフィットする人材って、デザイナーなのか……? というのは純粋にちょっと不思議に思いました。

日本のデザイナーのメインストリームは、もともと絵が描くことやモノづくりが好きだったり、グラフィックやアートワークに強みを持つ人たち。彼らは、日本市場の構造上、今までビジネスやマーケティングなどにコミットする機会がそれほど多くなかったと思います。
ところが海外は違うんです。海外のデザイナーはビジネスの話ができる

「海外にはビジネスの話ができるデザイナーがものすごく多い」。デザイナーに求められる役割は拡張してきている
ビジネスの話がすごく好きなデザイナー。

はい。ビジネスの話やマーケティングの話が大好きなデザイナーたちがすごく多い。

例えばAppleでインダストリアル・デザイン・グループの上級副社長を務めるジョナサン・アイブ氏。彼が事実上、今のAppleのデザイン哲学を創り上げたと言っても良いのではないかと思います。彼はイギリスのノーザンブリア大学出身でデザインを専攻していましたが、そこで受けたのは「Tシェイプ人間」になれ、という教育でした。
ある一部分ではとがっているけども、それ以外も満遍なくできる人材になれ、と。

デザインの領域でとがっているけども、それ以外の領域もちゃんと話が通じる、カバーできる人材になりなさいという、そういう教育が海外は多分割と主流ですし、ビジネスの場でも実践の場がある。この点が日本は相当、遅れてしまっていると感じますね。

日本のデザイナー教育を変えていく

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