【連載】grafが手がける、暮らしを豊かにするデザインvol.2 地域ブランディングに必要なこと

Oct 27,2017interview

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Oct27,2017

interview

【連載】grafが手がける、暮らしを豊かにするデザイン vol.2 地域ブランディングに必要なこと

文:
TD編集部

全3回でお届けする、クリエイティブユニット「graf」代表・服部滋樹氏へのインタビュー。第2回は地域ブランディングについて、お話をうかがいました。最後には少しだけ、モビリティデザインについての服部氏の考えも伺っています。

地域の魅力を発見する方法

地域のブランディングでは、どのように魅力を見つけていくのですか?

一般的に観光地と呼ばれる場所の多くは、新たな魅力が見出されないまま終わってしまっています。イメージが定着してしまっている所には今以上に人は来ません。でも、そこには、観光の裏に潜んでいる人間の暮らしがある。それこそ、実はその場所の魅力なんです。

スポットが当たっていないところに、魅力がある、と。

はい。僕らはそこに光を当てる方法を考えます。そうすると、新たな観光と人の関係が生み出されて交流人口が増えるんです。なので、イメージの無いものからイメージを新たに作っていく作業が大切になります。

例えば、人々に定着している滋賀のイメージって、ひこにゃんと琵琶湖と、鮒鮨(ふなずし)くらい(笑)。そこから考えるのではなく、知られていなかった新しい滋賀の魅力を探して、それを滋賀のイメージにつなげていくことが大切です。

D&DEPARTMENTの代表、ナガオカケンメイ氏と一緒に、滋賀県米原市多和田にある近江真綿の工房「北川キルト縫工」のリサーチを行う服部氏。昔ながらの伝統的技法で作られた製品をじっくりと観察中。

たくさんの人が「自分ごと」にしてくれる仕掛けを

他にも地域ブランディングの事例があればお聞かせいただけませんか。

この滋賀のプロジェクトがきっかけで福井県の鯖江市からブランディングの相談を受けました。眼鏡が有名な地域でしたが、市長によると「眼鏡の産業が鯖江市のシビックプライドに繋がっていない」とのこと。「何か良いアイデアはないか」と相談されました。

リサーチに行ってみると早速、あることに気づいたんです。日本の眼鏡の96%を作る産地なのに地元の人は外国製のものを使っているんですよ。これではシビックプライドなんて生まれないですよね。そこで、どうやったら鯖江市の人が地元で作られている眼鏡に愛着がわくか考え「マイファーストめがね運動」という企画を提案しました。

鯖江市に住んでいる子供達が初めて持つ眼鏡は、市がプレゼントするという企画です。調査すると、年間で約600人の子が生まれ、その3分の1がいずれ眼鏡を必要とすることが分かりました。そこで眼鏡協会の人に、年間200人分を子供たちにプレゼントできないかと相談すると「200本くらい大したことない」と言っていただき、今年からその企画を進めてもらっています。

マイファーストめがね運動の企画のほか、鯖江市「めがね博物館」の内装デザインも手掛けた。
服部さんは、もののデザインだけでなく、仕組みも新しく作り出すんですね。

結局、ものをつくることと仕組みを考えることを同時にしないと、上手く伝わりませんからね。何かを解決する時は、それだけを解決するのではなくて、たくさんの人々に「自分ごとにしてもらう要素」をいかに用意できるかが重要です。想いが加わる要素も設計に盛り込むんです。

他には、奈良県天理市と一緒に「めぐみ めぐる てんり」というプロジェクトを進めています。「美しき健やかさを求めて」 をキーワードにして、歴史、文化、信仰、自然など幅広いポテンシャルを秘める天理のめぐみを可視化し、観光人口の増加や移住・定住を促すことにつなげる事業です。

奈良県天理市×grafのブランディングプロジェクト「めぐみ めぐる てんり」にて手がけた制作物。パンフレットの他にも、移住・定住促進ドキュメンタリー映像も公開している。

すでに何回も天理に足を運びました。古代から続く営みや、目の覚めるような壮大な景色、日本最古の道「山の辺の道」、つながりを大切にする人々の姿から、天理には、健やかで美しい“めぐみ”がたくさんあると気付きました。それらを可視化するために、さらにリサーチを重ね、パンフレットやWebなどを使いながら、市内外の方へのブランドイメージの普及を進めています。

「行きたい場所」の広がりから生まれるカーデザインの豊かさ

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