クオリティの高い作品が結集!日中韓の学生によるカーデザイングランプリ決勝大会

Sep 22,2017report

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Sep22,2017

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クオリティの高い作品が結集! 日中韓の学生によるカーデザイングランプリ決勝大会

文:
TD編集部

カーデザイナーの卵たちが未来のクルマのデザインを競う「カーデザイングランプリ・アジア大会」。東京大会の様子はTDでもレポートしました。各大会を勝ち抜いた上位入賞者による決勝大会がソウルで開催され、またまた熱いバトルが繰り広げられました。その模様をレポートします。

日中韓の3カ国から集まった、デザイナーの卵たち

カーデザイナーやプロダクトデザイナーを目指す学生が即興でスケッチを描いてデザインを競う「カーデザイングランプリ・アジア大会」の決勝大会が2017年8月19日、韓国ソウルで開催されました。本大会は今年からの取り組みで、まずソウル、上海、東京で予選を開催(東京で行われた予選のレポートはこちら)。そして今回、各予選大会で上位3名に入賞した日中韓の精鋭12名が、ナンバーワンを決めるためにソウルに集結しました。本大会のようなイベントは「スケッチバトル」とも呼ばれ、世界各地で開催されていますが、「カーデザイングランプリ・アジア大会」は、その中でも大規模な大会です。

本大会を主催するのはKADA(カダ:韓国オートモーティブデザイン協会)。そんな大きなイベントが韓国の開催? と不思議に思う方もいるかもしれませんが、実は韓国では、ここ10年ほどでカーデザインに変化が見られます。2006年にアウディやフォルクスワーゲンで数々の優れたデザインを生み出したペーター・シュライヤーが起亜自動車に移籍したのを皮切りに、BMWのチーフデザイナーだったクリストファー・チャップマンが現代自動車のデザイン責任者に就任するなど、多くの優秀なデザイナーが流入。韓国車のデザインは大きく変わろうとしているのです。

2017年のフランクフルトモーターショーで公開された「Kia Proceed Concept」。

そんな勢いのある韓国で開かれるカーデザインの大会。スポンサーには韓国貿易産業省、韓国デザイン振興院、現代自動車、LG電子など韓国勢がずらり。日本からはスケッチに欠かせないマーカー「コピック」やクレイモデルで使用する「クレイ」のトゥールズインターナショナルが名を連ねています。会場は大学のデザイン学科の学生や卒業生を中心に、多くの参加者で賑わいました。

ムサビと静岡文芸から3名の学生が参加!

デザインバトルの出場者は韓国から6名、日本と中国から3名ずつの計12名。日本からは、東京大会で1位となった武蔵野美術大学の佐藤太亮さん(武蔵野美術大学)、2位の遠藤直哉さん(武蔵野美術大学)、3位竹内佑喜人さん(静岡文化芸術大学)の3名が出場しました。

当日のプログラムは2種類のセッションで構成されました。午前中はカーデザインに関するセミナーが中心。トヨタプリウスのデザインプロセスの紹介や自動運転時代のインテリアについてプレゼンテーションが行われ、その後、現役デザイナーたちが参加者のポートフォリオを見ながら1対1でスケッチを指導する、贅沢なセッションも開かれました。プロに自分の作品を見てもらう貴重な機会とあって、参加者が積極的に作品をプレゼンテーションする姿が印象的でした。

会場には事前に提出された個人作品のバナーが展示され、参加者は熱心に見入っていました。
現役デザイナーによる、1対1のスケッチ相談会も開催。デザイナーを目指す学生たちが熱心に指導を受けていました。
現代自動車の最高級車ジェネシスのデザインチームに所属するトップモデラーによるクレイ造形のデモも。

昼食後はいよいよ選考会を勝ち抜いた学生たちによるデザインバトルです。バトルは個人戦と団体戦の2種類。個人戦は事前に作品を提出しておき、当日審査員に向けてアイデアをプレゼンテーションする形式で行われました。

プレゼン会場。デザインに興味のある学生たちの熱気が充満しています。
トップバッターとしてプレゼンした佐藤太亮さん(武蔵野美術大学)。英語での発表にドキドキ!

有名自動車メーカーから参加した豪華な審査員陣

審査員を務めたのは、主に韓国で活躍する現役デザイナーや大学教授など19名。顔ぶれは多彩で、GM、トヨタ、Lexus、日産、現代自動車といったブランドのデザイナーが顔をそろえました。審査委員長はKADAのトップでもあるリチャード・チャン氏。「日本、中国、韓国の学生たちにお互いに交流があれば、自動車のデザインはもっと成長していくのではないか」という考えのもと、今回のカーデザイングランプリを企画したそうです。近い将来、東南アジアなどさらに枠を広げていきたいという計画も語ってくれました。

審査委員長を務めたKADAのリチャード・チャン会長。今後の見通しも語ってくださいました。

デザインバトル個人戦、結果はいかに?

デザインバトル個人戦、テーマは「2050年の自律走行」。12名の学生が思い思いに未来のモビリティを描きあげました。優勝したのはデトロイトのCCS在学中のSung Kwon Go氏。「Trend Transporter」と名付けられたその作品は、まるで香水瓶や口紅のようにファッショナブルな1人乗りのトランスポーター。コンセプトとデザイン性が高いレベルで融合しているのが印象的でした。

1位に選ばれた作品、「Trend Transporter」。
優勝したSung Kwon Goさん

日本から参加した佐藤太亮さんは、東京大会のアイデアを発展させたYOU-TOPIAで見事3位に入賞。まるで植物のような有機的な形にデザインされた乗り物が、パブリックスペースに休息場所を提供する斬新なコンセプトで多くの審査員を魅了しました。

東京大会で受賞した「YOU-TOPIA」をブラッシュアップして個人作品として提出。短期間で見事にコンセプトを完成させました。

世界のレベルを体感した団体戦

団体戦では、日中韓の学生が参加する混成チームが3チーム作られ、時間中にアイデアを練って競う形式で行われました。「実際のカーデザインの現場では、さまざまな国籍のデザイナーが英語を使って共同で作業を進めていくことが多い。それを学生のうちから体験してほしい」と団体戦の意義を説明してくれたリチャード・チャン氏。その意図通り、各国の学生により活発な議論が行われ、作品がまとめられていきました。

佐藤さんは、「3カ国の学生が競い合い、また団体戦では共同でデザインを制作したことで、各国のレベルや考え方を肌で感じることができたのが非常によかった」とイベントを振り返りました。日本の大手自動車メーカーに内定が決まっている佐藤さんですが、入社の前に視野が広がる経験ができたのは大きい、と感じているそうです。おそらく、今後の仕事にもいい影響を与えることでしょう。

団体戦では、佐藤さんが所属するチームが最優秀賞を獲得!

今回初開催となった「カーデザイングランプリ・アジア大会」。自動車業界のデザイナーの卵たちが国を超えてつながり、プロともつながるという、これまでにない機会を提供する場となりました。イベント後の学生たちの充実した表情を見ると、他国の学生と共同作業をした経験は、学生にとっても有意義だったようです。

ここまで取材すると、グローバルで行われるこういったイベント、すごく有意義なのになぜ日本の自動車業界発で行われていないのか? 学生やデザイナーたちから企画が生まれたりしないのかな? という素朴な疑問が。前回の記事でも書きましたが、実はアンダーグラウンドでやっているよ、といった情報などがあれば是非TDにお寄せください。取材してみたいです。

そんなつぶやきはさておき。自動車は誕生から100年が過ぎ、EVや自動運転、インターネットといった技術によって大きく変わろうとしています。そんな時代に新しい自動車の姿を作るであろうカーデザイナーの卵たちの豊かな想像力を見て、自動車の次の100年が楽しみになりました。

<写真提供> KADA/トゥールズインターナショナル

参加者の全員集合写真。みんないい笑顔ですね。
 

 

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