上級者向けの課題はかなりの高難度! レベルに応じた3つのクラス
講習会では、参加者のスキルに応じてビギナー、中級、上級の3つのクラスが用意されていました。ビギナークラスは、はじめてクレイに触れる人向け。まったくクレイの経験がなくても受講可能です。そして中級クラス、上級クラスになるにつれて難易度が上がり、制作物も複雑になっていきます。

ビギナークラスの課題は、階段に丸みが付いたような造形。まずは基礎となる形状を作ります。発泡スチロールで中子を作り、その上にクレイを盛っていきます。一見シンプルに見えるものの、正確な形状を作るのは難しく、はじめての参加者は直方体を作るだけでも数時間かかるそうです。基礎となる物体を作ったら、あらかじめ作ってあるテンプレートを使って指定された曲率で3種類のRをつけていきます。

『中級』では2つの方向の曲面で構成される三次曲面体がテーマです。正確な直方体を作り、その上面を削ってまず一方向にRをつけて二次曲面体を作ります。さらに別の方向にもRをつけ、滑らかな三次曲面として仕上げます。中心の1点だけは直方体から高さに変化がなく、すべての方向に歪みのないRをつけるためには、高い技術が要求されます。

『上級』の課題は図面を読み取って立体物に仕上げる能力が要求されます。課題は凸R(膨らんでいる曲面)、凹R(凹んでいる曲面)、それらの曲面の切り替え部分などで構成され、かなりの高難度。といっても講師陣が手取り足取り教えてくれるから、心配はいりません。立体造形を体得するための要素が多数埋め込まれており、既にクレイを仕事で使っているデザイナーにとってもよい腕試しになるクラスでしょう。
現場のリアルな悩みや疑問がぶつけられた質疑応答
全員が工程を終え、質疑応答の時間に。実際の制作現場での悩みから具体的なテクニックの質問まで、参加者から浴びせられる質問に講師陣が丁寧に答えていきます。


デザイナーは造形のスキルを持つべき
現在プロダクトデザインの制作現場では、デジタル化が進んでいます。デザイナーのスケッチをCADソフトを使って3Dモデルに起こし、画面上で形状の検討。できあがった3Dデータを工場に送れば、その通りの形で製品ができあがってきます。そんな中、クレイモデル造形の訓練をすることは、デザイナーやモデラーにとってどんな意義があるのでしょうか。

日本産業モデル造形振興会の中川七三一会長は、そんな時代だからこそ「デザイナーは造形のスキルを持つべき」と考えているといいます。同氏はトヨタ自動車で長年クレイモデラーとして活躍し、モデル造形部門全体を統括してきた人物。そんな中川会長に言わせると、立体構築のスキルがないデザイナーはアイデアを形にできないといいます。いくらかっこいいスケッチを描いても、立体にする段階でつじつまの合わないところが出てきたり、また造形力が低いため細部まで立体を詰められず、CAD上で手なりで作成してしまい、当初イメージしていたデザインとは微妙に違うものができあがってしまうケースが少なくないそうです。デザイナーが立体構築のスキルをしっかりと身につけておくことは、「基本のキ」。とても大切なことなのです。

クレイモデル造形は、イメージの源泉である脳とつながっている身体を使い、スピーディーに試行錯誤を繰り返しながら、立体を確認できる点が大きなメリット。プロダクトデザインは、最終的なアウトプットが立体物。だからこそ立体物で試行錯誤するステップを、この講習会で体験することはとても重要だと考えます。

この講習会、自動車業界やモデラー志望かどうかにかかわらず「誰もが感覚・感性を研ぎ澄ませながら立体造形を学べる場」として今後も続けていく予定とのこと。日本産業モデル造形振興会のFacebookページやトゥールズインターナショナルのコーポレートサイトにお知らせが出されるそうなので、気になる方はチェックしてみてください。
最後に、クレイモデル造形初級編のダイジェスト動画をご紹介。12分と少し長いですが、講座のエッセンスが体感できます。


