【design surf 2017】欧文書体のスペシャリストが語るフォントが持つチカラ

Dec 06,2017report

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【design surf 2017】欧文書体のスペシャリストが語る フォントが持つチカラ

文:
TD編集部

皆さんは、公共の場で使われているフォントに注目したことはありますか? 2017年10月13日(金)に、クリエイティブ市場の総合商社・株式会社Tooの主催で開催されたセミナーイベント「design surf seminar 2017 −デザインの向こう側にあるもの− 」。
今回はこのセミナーから「公共サインのフォント、世界の潮流とこれからの日本の課題」のレポートをお届けします。登壇したのは世界的に有名なフォントメーカー「Monotype」のフォントデザイナー、小林章氏。欧文フォントのデザイナーとして数々のプロジェクトに携わる同氏には、日本の公共サインはどのように見えているのでしょうか。

海外の人にとって読みにくい、日本にあるサインの問題とは?

話題は日本語書体の中のローマ字表記に移ります。小林氏は、そもそもこれまでの多くの日本語書体のローマ字部分は、英文を組むのに向いていないと言います。
「欧文書体は一文字一文字の印象ではなく、全体のリズムや単語の輪郭がはっきり見えることが大事です。文字単体がきれいでも単語を組んだ際に同じようにきれいかというと、そうではない」(小林氏)

続いて小林氏は「全体のリズムってなんでしょう?」と会場に問いかけました。
映し出されたスライドにはNeue Frutigerと、MSゴシックの2つの書体が並んでいました。

「この日本語書体の場合、全角か半角の中にローマ字が等幅で設計されています。欧文書体の読みやすさは縦線の空間の調和がとれているかで決まるのですが、MSゴシックはそれを無視しちゃっています。ビタミンCとかビタミンEとか、記号的な感じで英字を使用するなら良いと思うんです。でも、このフォントで英字の文章を組むには全く向いていないんです」(小林氏)

さらに日本のサインには無理な省略や変形が多いと続けます。例えば周りに余白が残っているのに「駅」の意味である「Station」を無理やり「Sta.」と略してしまったり、JR線や東急線の「線」の意味である「line」を「L.」と略してしまったり。

また英文の情報を左右から極端に縮小してしまって読みづらくなった例もいくつか紹介。充分なスペースがない場合の解決策として、小林氏はコンデンス体という書体のバリエーションを日本でも有効活用してほしいと言います。
「例えばドイツの道路名のサインには縦長の書体を使っています。名前が長い通りもあるので、最初から配慮しているんです」(小林氏)

さらにドイツでは、サインの取り付け枠にも工夫があるそうです。
「これはテレスコピックという枠で、道路名に合わせて枠の長さを調節します。ドイツでは、何を優先させるか、ということがはっきりしている。一番大事な情報は変形させないという考え方があります」(小林氏)

サイン以外でも、ちょっと気をつけてほしい。小林氏が指摘する日本特有の表記とは?

それから小林氏が指摘したのは「文章中の大文字表記」と「引用符」
英文での読み書きを普通にしている人にとって「全部大文字で組まれた単語や文章は怒鳴っているように見える」とのこと。会社のロゴが全部大文字の場合に文章中でも全部大文字で組むという風潮がありますが「文章のなかで社名が出てくる場合はロゴに合わせる必要はない」と語ります。
また、単語を強調するつもりで引用符でくくってしまうと「皮肉」と受け取られるような文章になってしまうことがあり、こちらも注意したい点として挙げられました。

小林氏からの提案。ドイツのDIN1450を参考にアップデート。

小林氏は、これからの日本のサインをもっと読みやすいものにしていくために2013年に改訂された最新の DIN1450を推奨すると言います。
「DINとはドイツの工業規格のこと。日本のサイン表示で使われている欧文書体もこのDIN1450規格の考え方に沿ってアップデートすれば良いのでは」(小林氏)

ちなみに今回改定されたDIN1450には、DIN がこれまで標準書体として使い続けてきた DIN 書体が全面的には推奨されていないと言います。これについて小林氏は「改めて検討してみたら、そこまで良くなかったという結果だったと思うんです。DINはそれを隠さないわけだから信用できますよね」と言います。

DIN1450が推奨する書体の選び方・使い方のポイントは次の通り。

・適切な字幅や線の太さを持つ
・フトコロが閉じ気味でない
・字形の判別がしやすい
・単語の輪郭のデコボコが重要(大文字と小文字を使って表記する)
・適切な文字間が重要

みなさんは、小林氏からのメッセージを受けて、どんな事を考えましたか?
いつも何気なく見ている公共サインのフォント。今回、セミナーで小林氏が指摘してくださったことは、「フォントの世界の面白さ」を覗かせてくれただけでなく、国際化が進む日本において「サインとは何か」を、根本から考え直すきっかけになった気がします。

 

※今回レポートしたセミナー、「design surf 2017」の詳細はこちら。セミナーレポートや関連セミナーはこちらのFacebookページからもご覧頂けます。

小林 章(こばやし・あきら)

モノタイプ社タイプディレクター。欧文書体の国際コンテストで2度のグランプリを獲得。ドイツ在住。世界的な書体デザイナー、H. ツァップ氏や A.フルティガー氏と共同で書体を開発。書体に関する著書多数。コンテストの審査員も務める。

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