「速く走れそうなクルマ」のデザインに共通する3つのポイント青戸務のカーデザイン大賞解説 vol.2

Apr 20,2017report

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Apr20,2017

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「速く走れそうなクルマ」のデザインに共通する3つのポイント 青戸務のカーデザイン大賞解説 vol.2

文:
TD編集部

日本カーデザイン大賞、ゴールデンマーカー賞 コンセプト部門を受賞したジャガーI-PACEコンセプト。このクルマは2016年のLAオートショーで発表された同社初の電気自動車だ。コンセプトモデルながら完成度は高く、2017年には量産版を発表し、2019年半ばに発売することがアナウンスされている。日本カーデザイン大賞2016-2017の選考委員長を務めた青戸務氏に、ジャガーI-PACEコンセプトのデザインについて聞いた。

電気自動車でSUV、それなのに「ジャガーらしい」クルマのデザイン

日本カーデザイン大賞2016-2017においてゴールデンマーカー賞・コンセプト部門を受賞したジャガーI-PACEコンセプト。このカーデザインのどのような点が評価されたのでしょうか。
青戸:コンセプトカーの評価は大変難しいんですよね。何しろ発売前提のモデルもあれば、100年先を想定したコンセプトもありますから。今回のジャガーI-PACEコンセプトは前者になります。電気自動車でSUVという前提の中で、とてもジャガーらしい、プロポーションの良いクルマを仕上げてきたところが評価されました。
日本カーデザイン大賞
2016-2017 ゴールデンマーカー賞・コンセプト部門
ジャガーI-PACEコンセプト
プロポーションが良いとは、どういうことですか。

サイドから見たときのバランスがいい、ということですね。クルマの美しさというのは、プロポーションで決まるんです。
ジャガーといえば昔のEタイプのロングノーズ、ショートデッキ、つまりフロントボンネットが長くリアが短い美しいプロポーションが有名です。

一目でジャガーだとわかる、ロングノーズのシルエット

ところがこのI-PACEは違いますね。Aピラー(フロントウインドウの左右の柱)がフロントタイヤの上にきている、つまりキャビンが前にきているプロポーションですね。これはスペースを十分に確保して快適な室内空間をつくりだすという最新の手法です。
さらにリアウインドウを寝かせてバランスをとり、スポーティなプロポーションを生み出しています。

基本的にクルマは、タイヤが四隅にあるほどカッコよく見えます。
I-PACEを見ると、リヤのオーバーハングが非常に短いですよね。だからその分キャビンを前に出して、バランスを取ったのでしょう。

ジャガーのデザイン・ディレクターはイアン・カラムという人なんですが、彼は以前アストン・マーティンも手がけていました。アストン・マーティンも抜群にプロポーションのいいクルマですよね。このI-PACEも、サイドから見たときバランスの良さが際立っていて、それだけでクルマをきれいに見せています。

タイヤが四隅についているほどかっこいい。
エモーショナルなラインとウインドウの薄さが
スマートなプロポーションを際立たせる。
 

さらに、フェンダーの抑揚やサイドのキャラクターラインがとてもエモーショナルですね。そしてウインドウが薄い(高さが低い)のも特徴です。車高の高いSUVはどうしてもサイドビューで見たとき厚みが出るんですが、それをエモーショナルなラインとウインドウの薄さでスマートに見せています。それがプロポーションの良さにつながっているのでしょう。

「速く走れそう」に見えるカーデザイン、3つのポイント

たしかに、改めて見てみると個性的なデザインですね。でもかっこいい。

クルマのデザインには、かっこよく見えるポイントというのがいくつかあります。クルマというのは、いわば人力増幅機械ですよね。歩くスピードの何十倍という速度で移動できるという。そこで、「速く走れそう」というのが根本的な魅力になってくるんです。

そのときに重要になってくるポイントが3つあります。
まず、先程から申し上げているプロポーションの良さ。
これは陸上の短距離走者の肉体が美しいのと同じで、クルマもプロポーションが良いほど、躍動感が出てきます。
次にタイヤの大きさです。デザイナーのアイディアスケッチではタイヤを大きく書きます。これは、大きなタイヤが力強いスポーティなデザインを意図するからです。実際に開発が進むと、ハンドリングやとり回しなどの機能性を重視するため現実的な大きさになっていきますが、デザイナーが意図したイメージは残すことができるんです。
そして、最後のひとつがスタンスの良さ。つまり、踏ん張った感じが強いことです。前後のオーバーハング(前後方向のタイヤより外側部分)が短く、タイヤが4隅にあればあるほど、この踏ん張り感が出て、クルマは魅力的に見えるんですよ。
「早く走れそう」というクルマの魅力を引き出すデザイン

 

プロポーション、タイヤ、スタンス。この3つが「速そうに見えるクルマのデザイン」に共通していえるんですね。ありがとうございました。
「未来の乗り物」に乗るというドキドキ感

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