【編集部トーク】結局のところ、UI/UXって何ですか?石川くんと話してきた

Feb 24,2023report

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Feb24,2023

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【編集部トーク】結局のところ、UI/UXって何ですか? 石川くんと話してきた

文:
TD編集部 青柳 真紗美

UI/UXデザインについて考えてきた私たち。前回のTDトークで企画の発端になった「石川くん」に呼びかけたところ、編集部に遊びに来てくれました。石川くんは現在のフリーのプロジェクトマネージャー・サービスデザイナー。いくつかのWebサービスやSaaSの開発の中でUXデザイナーと協働することもあり、自分自身もUXデザインについて日々考えてきたそう。ということで、あれこれ疑問をぶつけてみました。

以前の記事:【編集部トーク】「結局のところ、UI/UXってなんですか?」 わかったこと、わからないこと

UXデザイナーって、結局何をする人なの?

マーサ:石川くん、久しぶり! 石川くんはこれまでいくつかの企業でサービスデザインに関わってきたんだよね。いろんな組織でUXデザイナーを必要としてる、という声が聞かれるようになってきたけど……実際にUXデザイナーがいる現場は上手く回ってるのかな? 本当のところ、みんなどうしてる?

石川くん:UXデザインという仕事に対する認知度はまだまだ低くて、「(雇ってみたけれど)何をしてくれるのかよくわからない」という状態の組織は多そう。僕がみてきた範囲だけど。
「サービスデザイナーやUXデザイナーは、形や重さがないものを作ってるから、デザイナーだと受け入れられにくい」と、ある人は話してた。なるほどと思ったよ。
特に日本の場合、形あるものをデザインと呼ぶ傾向があるよね。でもデザインって、広義では企画して設計するところまでを指す。それがわかると「UXデザインって大事だよね、そういうフローを整理するのって面倒くさいけど大事だよね」ともっと理解してもらいやすくなるのかもしれない。

アリ編集長:それが全然わからなかった頃に「UXってなんだっけ?」と石川くんに聞いたら「コーヒーを飲んでる人に紙コップを売るならどうします?『Buy it Now!!』とデカく書く、とか考えがちだけど、そうじゃなくって、という話です!」と。……余計「何だった?』って(笑)。わかったふりして「うん」と言ったけど、本当はよくわからなかった。だから知りたいんだよなぁということで、Ubieのデザイナーさんとたまたま縁があったから教えてもらおうって。そこから始まったんだよね、この企画。

石川くん:す、すみません。多分あの頃、僕なりに見てたUXについて、手探りで言葉をいっぱい使って伝えようとしたんだろうな。

マーサ:なるほど、……うーん、私もよくわからなくなっちゃった(笑)。結局、UXデザイナーって何をする人なの?

石川くん:究極的には要件定義してる人、と言えるかもしれない。
昔から、優秀なマネジャーやディレクターで、プロダクトの核の部分にフレームワークを当てて、判断基準とかをどんどん作っていく人っていましたよね。そういう人がいないとどうにもならないというわけではないけど、そういう人がいるときのプロジェクトの進行速度は全然違う、みたいな。そういうのがUXデザイナーの仕事だと言ってもいいかも。いなくなると気づくんですよね、その人たちの価値に。
歴史を調べないとわからないけど……個人的には、要件定義するときに外せないあれこれを体系化して、そればかりやる人がUXデザイナーになったのかなとも思う。

マーサ「誰がこれを考える役目?」みたいなふわっとしがちな領域を拾っていき、言語化したり、事業部横断して見える化したり。そっか、一見、どこの組織でも確かに必要とされていそうだね。でも、そういう人が必要なのはわかったとして、じゃあなんでUXデザイナーって広がっていかないのかな。

石川くん:プロダクトマネージャーとUXデザイナーは似ていると思っていて、どちらも「総合格闘技」感がある。複数の分野を履修しないと戦えない。建築とかもちょっと近いかな。建築学とか化学とか勉強するけど、経済も勉強しないと、とか。そもそも土俵に立てる人の数自体が少ないのかも。

外から見ても「代表作」がわかりにくい

モイモイ:建築家なら成果物もわかりやすいじゃん。たとえばUXデザイナーのスーパースターがいたとして、これは彼の仕事だみたいなのって、わかるのかな。

石川くん:僕がUXデザイナーに興味を持ったきっかけに『マッピングエクスペリエンス』という書籍の中で出会った「サービスブループリント」という手法があるんです。ユーザーが商品に出会ってから、どういう感情の遷移でGoogle検索してウェブサイトにきて、お店に行ってプロダクトを手に取って……っていうシナリオごとに必要な小道具としてデザインされたものが存在するんですけど、それが全部1枚に書いてあって。それを見て「これがサービスデザイン、UXデザインの仕事なのか、すげえかっこいい!」って興奮したんです。でも……確かに建築家みたいに、特に国内事例でそういう、傑作だって言われるのはまだ確かに見たことない。

モイモイ:ブループリントは最終的なアウトプットではないから見えなくなってしまうね。建築だったら設計図はありつつも、完成した建物の見た目でわかるけど、設計図で終わっちゃうとすると……。

石川くん:そうですね、高速道路を見て萌える人が少ないみたいなことかも。

モイモイ:例えば作ったサービスとかアプリの導線がすごくスムーズで、このサービスだけ異様に使いやすいみたいなことがあれば、世間の評価がUXデザイン自体の評価にも反映されるのかもしれないなとは思うけれど、どうなのだろう。

石川くん:とある小児病院の中のサービスデザイン全体を変える、という事例をどこかで読んだ記憶があります。目的は「手術前に(手術をしたくないと言って)退院してしまう子どもを減らすこと」。
この病院で手術を受けたいと思ってもらうことが大事だ、と考えたとき、必要なのは「君の味方だよ」と伝えること。それならば、名刺には写真じゃなくて似顔絵、明朝体より手書きフォント、子ども目線の院内の表示を増やすようにしようとか、設計が決まっていく。子どもたちとのタッチポイントで難しいと感じることはしないようにしようという認識をみんなが共有し、それに基づいて細部のデザインが固まっていったことで、印象が一気に変わったんです。結果的に入院中に「この病院で手術をしたくない」と訴える小児患者は減った。こんなふうに見えてくるとわかりやすいですよね。でも、そういう事例はまだ少ないなとは思います。

マーサ:そっか。代表作とか事例がわかりにくいんだね。だから認知も広がっていかない。

石川くん:UX界隈だと、僕も今怖いんですけど、おそらくこの今回の記事も一定の会話で叩かれると思うんですよ……お前が偉そうに語るな、みたいな。「UXってこうだよね」っていうと「そうではない」って言われる。だから結構怖くて言えないってのもあるかも(笑)。

作らないことも正解

石川くん:あとは、UXデザイナーの人たちの間で「作らないことも正解」という共通認識もあって、もしかしたらそれが結果的にUXデザインの仕事をわかりにくくしてるかもしれない。
僕たちは日頃、課題があったときに単純に何かを作れば解決するっていうバイアスを持ってるけど、実は開けてみたら作ることで解決できそうな問題って本当は問題じゃなかったりとか。スケープゴートというか……この部分のせいだと言ってるけど本当は違った、みたいな。そういうのに気づいたときに、やった! って喜ぶのがUXデザイナーなんです。

アリ編集長:うーん。じゃあ何を作っているの?

石川くん一番の成果物は文脈かもしれません。そのために「WHY」をすごい深堀りする。時に意地悪な質問をする。なんでそれがペインなの? なんでそれに怒ってるの? と。で、それらを掘り続けたときの問題点を突き詰め、それに対する処方箋を見つけたらほぼUXデザインの仕事は終わりで、UIデザイナーにこういうのを作ってねって。

アリ編集長:そこで引き継ぐんだ。

石川くん:ワンストップでできる人もいます。そのままパンフレットとかプログラムを作ったり、できる人もいるんですけど、でもやっぱり主な仕事は文脈作りかな。いつ、どこで、どういう背景の人がどんな気持ちでやってくるか……脚本を作ってる感じに近いかも。

引き算のデザイン

マーサ:TDでは今後も「UXを担当して」と言われた人や、UXデザイナーを目指す人の参考になるような記事を届けていきたいと思ってて。今まで「結局のところ、UIUXってなんですか?」の連載でおしゃべりしてきたみなさんからは、体系立てられた知識と全然違うところで鍛えられてるものが多いような印象を強く受けたんだよね。自分で手を動かして物作りしようとか、役に立たないことしようとか、旅行をした方がいいとか。でも、今の話ってどちらかというとロジカルなかんじだなと思った。

石川くん:UXデザイナーという役割でいうなら、フレームワークをいっぱい輸入して、使い方もわかってるっていうのかな。すでに使えるフレームワークやライブラリ、ガイドラインなどの知識体系があるのに自分流でゼロから作ろうとすることを「車輪の再発明」とよく言うのですが、それはしないという考えの人も多いです。

モイモイ:なるほど。

マーサ:デザイナーは自分の持ってる引き出しの数で勝負、そこから発想を生み出して広げてなんぼ、というところがあるよね。だから自分の体験の幅を広げていこう、というアドバイスが多かったのかもしれない。UXデザイナーの場合はいろんなフレームワークを知って使って使い方を学んでいくことで武器を増やしていくのかもしれないね。

アリ編集長:そうすると、武器を増やすためには何をするといいんだろ。俺みたいな勤め人がUXについてなんとかしろって言われたら、どこから手を付けるんだろう。夏の賞与のときに1回プレゼンしなきゃならないけど、どうする? っていう疑問に応えるような記事が、どっかにあってもいいな。何かちょっと役に立つ、明日役に立つUXみたいな。

石川くん:紙とペンがあればUXデザインはできますからね。

アリ編集長:ひめくりカレンダーができるね。UX格言で。

石川くん:例えば和菓子屋さんを想像してみてほしいんです。よく来店してる人を整理してプロトペルソナを作って。どの時間帯にどういう目的で買っていくかを整理するだけでも、UXデザインの始まりです。例えば午後2時ぐらいに来て、買い物ついでに寄って家でおやつに食べる人が多いとします。これまで商品を紙箱に入れて、それをさらに紙袋に入れてテープで貼って渡してたけど、実は帰ってからすぐ開けてぱっと食べたかったんじゃないかと考えたら、箱なんていらなくて、テープも貼らずにくるくるっと折るだけでいいんじゃない? とか。そんな話が見えてきた時はUXデザインできてると言っていいのでは。

フジュー:今日の話を聞いてると、省いたり効率化したりする引き算的な思考に関する話題が多い印象があります。
「物を作ること」は基本的に足し算だとみんな認識するので、見えづらいのかも。そしてさらに、問題がなくなると問題があったことすら忘れていっちゃうから……。

アリ編集長消えていくデザインですね。みうらじゅんが昔言ってた「空(くう)あり」みたいな。
でも、上司から「今日から君はUX担当ね!」って言われたら、何かやんなきゃ、何か作らなきゃと思うよなぁ。

ユーザー体験の勘を磨き抜く

フジュー:新しく作ることが必ずしも正解ではないとして、「疑いの種」みたいなのに気付けるスキルはどうやって身につくのかな。そもそも俯瞰して見た経験がないと気づかないじゃないですか。問題があることにすら気付けない。見えない問題が存在することに気付くスキルってどう蓄えるんでしょう?

石川くん:感性や感覚の部分を養う必要があるから時間はかかるだろうと思います。例えば違和感に気づくとか、意地悪な質問を思いつくセンスとか。「それって本当は問題じゃないんじゃないですか」って、普通は言えないですよね。人から何か意地悪な質問されて、ハッとした経験を持ってないと出てこないかもしれないし。あと場数も関係してくる。
他にもたとえば「おせっかい」から始まる部分も多いと思ってて。もっとこうした方が喜ぶんじゃないかとか、不便だろうとか。単純にいろんなお店に行って不満をいっぱい持つだけでも勘は養える気がしますね。

モイモイ:ここまでの話を聞いてると、UXデザイナーはプロダクトに深入りしすぎない方がいい感じもするね。自分が手を動かして作った愛着のある製品だとどうしてもバイアスかかるじゃん? よくデザイナーがユーザー側に立つのが大事って言うけど、自分で作ったものだと客観的に見るのは難しいんじゃないかな。

石川くん:そういう意味では、「絶対これを作りたい!」っていう「想い」に入っちゃうとうまくいかなくなるのかも。僕自身、それでプロダクトマネージャーとして失敗した経験もあります。やっぱり開発って、何か作りたい気持ちが強い。そこに巻き込んでしまうと、デザイナー側もユーザーが喜ぶのを想像してやりたくなっちゃう。客観性を欠いてしまう。ただ、プロダクトの理解が深まるごとに、気づくべきペインには気づきやすくなるということもまた事実だと思うんです。高い理解度は、良い感受性に繋がると信じてます。入りたてのUXデザイナーよりも、長く在籍してるUXデザイナーの方がプロダクトのことを理解してるから、鼻がきくというか。「ここは派手に問題に見えるけど実は問題じゃない」とか「ここはあんまり注目されてないけど、めちゃくちゃ問題だ」っていうところの勘の良さが結構違うのではないかと。

マーサ:それはそのプロダクトに対する勘なのかな、それともUXデザインのスキル?

石川くん:どちらとも少しずつ違っていて、ユーザー体験の勘、というのが正しいかな。
同じプロダクトでもユーザーによって使われ方は変わるでしょう、会社それぞれのコンテクストが違うから。例えば「このソフトウェアは中小企業が使う前提で作ってきたけど、エンタープライズ版ではこんな使い方をされてる」とか。いろんなケースを体感してる。そうすると、それぞれのユーザー視点が見えていくようになって解像度が上がっていくと思うよ。

アリ編集長:「UXのタテヨコナナメ」っていう連載を始めたけど、それとは別軸で、今日から使えるUXデザイン、みたいなコーナーを始めてみようか。

マーサ:そうだね。でも……切り口は無限にあるような気がしてきた。UXデザインの手法を解剖していってもいいかもしれないし、事例を探しにいってもいいかもしれないし、あるいは、業界ごとに区切っても面白いかも。たとえば食のUXと住のUXと遊びのUX、どれも面白そう! ああ、またわからなくなってきた。

モイモイ:UXといっても、領域が広いからね。そういえばUXライティングの本、買ったなぁ(笑)。

見えないデザインを探しに行こう

「UXデザインは(外側からは)見えない」。言われてみるとたしかにと思うけれど、その前提に立って考えてみると新しい発見がたくさんある。見えないもの、あるいは消えてしまうものをデザインするって、どこか禅問答にも似た感覚だ。

見えないからこそ解釈にも違いが生まれ、何から取り組んでいいかわからないのかもしれない。わかったことは、開けてみると面白そうな次の扉が目の前にいくつもあるということ。その先の景色がどんなふうに繋がっていくのかはまだわからないけど、一つずつ扉を開けて見てみたいと思います。今後に乞うご期待!

 

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