【連載】アクシスと考えるこれからのデザイン(前編)編集長が語るデザイン誌『AXIS』のいま

Feb 15,2019interview

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Feb15,2019

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【連載】アクシスと考えるこれからのデザイン(前編) 編集長が語るデザイン誌『AXIS』のいま

文:
TD編集部 藤生 新

前後編でお届けする、デザイン誌『AXIS』の編集長インタビュー。今回は、2017年から同誌を牽引する現編集長・上條昌宏(かみじょう・まさひろ)さんのお話です。「デザイン」という言葉の概念が拡張し、いたるところに溢れている現代。今、デザイン専門誌『AXIS』が持つアイデンティティを語っていただきました。

みんなが同意しなくても良い

編集部の中では日頃どんな議論をしているんですか?
エディトリアルは2者でしています。普通の出版社は外部のデザイン事務所に依頼するようなところを、アクシスは社内にデザイナーがいるので、編集とデザインが近いのが大きな特徴かもしれません。
たとえば、2018年12月号の特集「夜と朝」では、世の中が「昼間中心」の構造になっている中で、諸外国に比べると夜健全に遊べるアクティビティが国内では少ないのではないかという問題意識から企画がスタートしました。現在ではいろいろな働き方、ライフスタイルがある中で、「昼偏重」になっていることには違和感があるので、クリエイティブの力で「夜と朝」を活性化できれば新しい市場づくりにも繋がると思ったんです。
社内で議論する際にも、必ずしも「みんなが同意しなくても良い」と思っています。あるところで編集長が強く決断しなくてはならない場合もある。「全員が良い」と思っているものだけが良いわけではないからです。でもアイデアの強度を上げるために、刷り込みのように何度も何度も同じことを話すことは大事です。
特集の企画はどのように進められるんですか。

全員が一緒になって走る感じです。向かう先は決まっているけれど、そこにたどり着くまでのアプローチはいろいろあっていい。その多様性が企画の幅やユニークさにつながると思っています。

リサーチはどのように?

リサーチのためのリサーチはしていません。ぼくの場合は、ただ街を歩いたり、利害を超えて話せる人とディスカッションすることを大切にしています。編集者の仕事は一人ではできないので、周りにどれだけ刺激的な人がいるかが大切なポイントになってくるんです。
なのでぼくは友だちは少ないのですが(笑)、そういう風に話せる人は多くて、しかもデザイン関係以外の知人が多いので、編集の仕事にとってはとても役に立っていますね。

そうそう、ウェブマガジンも好調のようですね。

以前は『jiku』という「オフィシャルサイト」が存在していましたが、『AXIS』が運営しているとは広く認知されていませんでした。

それなりに読者は付いていたのですが、ブランディングという点ではほとんど効果を挙げられていなかった。月間ユニークユーザーは3万くらい、リニューアル後は記事の本数も増やし、取り上げるジャンルも建築、フード、スイーツ、車、働き方など、幅広く設定しています。

その結果、1年くらいで月間ユニークユーザーは順調に伸びました。さらに、それまで雑誌で紹介していた「新製品や展覧会ニュースといったフローな情報」をウェブに移行し、雑誌は「長期間寝かしていても意味のあるストック情報」で構成するように変化してきています。

「雑」の中にこそ未来がある

「『AXIS』ならでは」のアイデンティティはどこにあると思いますか?

「デザイン」という言葉に様々な色が付いている中で、雑誌として「デザインとはこういうものだ」と言うことは大変な作業です。だから逆に手垢が付いていない語り方として、「デザイン」という看板を下ろして語ることもアリなのではないかと思っています。

もちろん、そういう語り方には困難と可能性の両面が付いて回りますが、表面的ではなく、より深いところにある「デザイン」という考え方を『AXIS』に残すために、そういうやり方を選んでいるんです。

また、記事は多くがバイリンガル構成になっていることも重要です。
ひとつの雑誌の中に日本語と英語を押し込むと文字だらけになってしまいますが、それでもグローバルな視点や海外の読者とのコミュニケーションは大切なので、このスタイルを継続しています。

雑誌の低迷が叫ばれていますが、これからの『AXIS』はどのようになっていくのでしょう。

現在、世の中の紙の雑誌の売上は横ばいで、ウェブのビューワー数は増えてきています。それでも、紙の雑誌は絶対になくならないと思います。

同じ文章でも、雑誌で読むときとウェブで読むときとでは脳に入ってくる情報量が異なるという記事をどこかで見ました。それは紙に印刷された写真の場合も同様で、「印刷」の情報量の多さを知ってもらいたくて、『hinism』もつくりました。

雑誌は「雑」という字の通り雑然感があって、専門書や論文とは異なります。そして、その「雑」の中にこそ未来があると思っているんです。

雑誌では最先端のものからレトロなものまで、時間軸やジャンルも超越して、一冊の本の上で一本の筋が通っている。そこに雑誌ならではの最大の魅力が残っているのだと思います。

ありがとうございました。上條さんのバックボーンから『AXIS』の過去・現在・未来まで、それこそ「雑」でありながら一本の筋が通ったお話をお聞きすることができました。歴史がありながらも、現在進行系で「デザイン」に真摯に向き合い発信され続けている『AXIS』の活動を、これからも楽しみにしています。

インタビューを終えて

上條氏が編集長に就任した際に撤廃された、デザイン誌『AXIS』の代名詞とも言える「表紙シリーズ」。
その理由として、現代のデザイン界の中心が「一人の偉大なデザイナー=マエストロ」の仕事からチームビルディングへ移行しているからだというお話は納得のいくものだった。また、そうした変化は「デザイン」という言葉に対する捉え方を根本から揺るがしつつあるのかもしれない。

たとえば、最近は筆者自身も「名もなき複数のデザイナー」の仕事に魅力を感じることが増えている。

橋や高架などの公共建築はその代表例だが、昔は無愛想でかっこ悪く見えていたそれらの「デザイン」が魅力的に思える瞬間がある。またデザイナーと仕事をともにする中で、独立して個人名義で活動しているデザイナーよりも、企業の一員としてインハウスで働いているデザイナーの方が活力を持っているように感じることも増えてきた。

それでは、「デザイン専門誌」にできることとは何なのか?

そのことへの答えは、上條さんが話していた「みんなが同意しなくても良い」という話題の中にあるかもしれない。現代のデザインは一人の「マエストロ」を後景に追いやったが、それでもなお、一人の人間の強い意志が集合知を覆し、それがまた集合知によって覆され……という往還の中にこそ、「デザイン」をめぐる探究はあるのではないかと思った。

次回のインタビューでは、こうした「デザイン」という概念をめぐる攻防について、『AXIS』前編集長の石橋勝利さんに、より詳しいお話をお聞きしてみた。ぜひ、来週の更新をお楽しみに!

『アクシスと考えるこれからのデザイン(後編)』は2月22日(金)の更新予定です。

 

 

<AXIS Galleryで開催予定の卒展一覧 ※記事公開日以降>

女子美術大学短期大学部 デザインコース テキスタイルデザイン卒業制作学外展(2年・専攻科)(2019年2月14日(木)~ 2月17日(日))

武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 2018年度卒業制作 選抜展「shide CONTACT 2019」 (2019年2月21日(木)~ 2月26日(火))

武蔵野美術大学 基礎デザイン学科 卒業制作展「CHALLENGE -Graduation Show-」 (2019年3月2日(土)~ 3月5日(火))

静岡文化芸術大学 有志卒業制作展「Re:STEN TOKYO 2019」(2019年3月8日(金) ~ 3月10日(日))

上條 昌宏(かみじょう・まさひろ)

1970年東京生まれ。専門学校桑沢デザイン研究所を卒業後、渡仏。 帰国後、株式会社アクシスに入社し、雑誌販売や編集業務に従事。2017年よりデザイン誌「AXIS」編集長。

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