それは未来にとって重要なものなのか?
努力……僕は人間としてだめなところがいっぱいあるから、そういうところはちょっと努力したほうが良いかな(笑)。好き嫌いもたくさんあるし、だからみんなに迷惑かけないようにしようとか(笑)。

努力とは言わないかもしれないけど「ロボットがそこに必要なのか」とか、「どういう人がどういうことに困っているのか」とか、そういうことを冷静に見続けるのが大切だと思います。
ひとしずくの情熱に対して、それを達成させるには仕事のほとんどを覆うロジックと理性がないと”ビジネス”にしていけないですよね。

家庭用プロダクトとして防犯センサー等を内蔵させ、
サーバーと警備会社をつなぐシステムとして研究開発中。
(フラワー・ロボティクス社HPより)
誰に聞いても正しい答えは出てこない
しますね。やっぱり使う人たちのことを考える上では、技術者とだけ話していてもアイデアは出てきませんから。ただ、現実の生活の中にロボットが入るってなかなか想像しにくいので、誰に聞いても正しい答えなんか出てこないんですよね。
だから最終的には自分の感覚を信じるしかない。そこをいつも考え続けるのが大変です。
ただし、美しいモノや考え方を生み出すことは社会にとって意味があります。そこを信じて突き進んでいる事は間違いないです。
ほとんど毎回そうです(笑)。
ひとくくりに投資家と言っても、みなさん判断するポイントが違いますよね。面白い技術に投資する人もいますし、株を売って一円でも多く儲けたい人ももちろんいる。面白いアイデアだと認めてもらっても「で、どのくらいでマネタイズするの?」と、こてんぱんに言われることがほとんどですね。
企画と開発年月によりますが、数億円〜数十億円単位です。会社経営をやってみるとわかるのですが、開発費のほとんどは人件費ですよ。しかし具体的な製造の段階になると部品製造にも相当かかる。たとえば、ロボットの身体のパーツの金型を作るだけでも1億かかることがあります。ロボットは部品の点数が多いですからね……。しかも金型は一回作ったら、もう変えられないので、根性を決めないと(笑)。失敗しても微調整とかできませんから。ロボットづくりは人も投資も必要です。なかなかやりがいはありますよね。
いっぱいあります、いっぱいあります。でも、みんなそうじゃないですかね。
ロボット業界ではすごく画期的なアイデアでも、マーケットにフィットしないと判断されたものはお蔵入りになりますよ。それも1つの答えですよね。
若い頃は自分がつくるものにしか興味がなくて「なんでわからないんだ、この大人はわかってないなあ」とか平気で思ってましたけど(笑)。段々冷静に受け止められるようになってきて、こういうことが大人になるってことかなあって思います(笑)。
※次回「【連載】「ロボットがいる日常」をデザインする vol.3」は7月27日(金)公開予定です。

松井 龍哉(まつい・たつや)
フラワー・ロボティクス株式会社代表取締役社長/ロボットデザイナー。 1969年東京生まれ。91年日本大学藝術学部卒業後、丹下健三・都市・建築設計研究所を経て渡仏。科学技術振興事業団にてヒューマノイドロボット「PINO」などのデザインに携わる。 2001年フラワー・ロボティクス社を設立。ヒューマノイドロボット「Posy」「Palette」などを自社開発。現在、自律移動型家庭用ロボット「Patin」を開発中。2017年よりヨーロッパ各地の美術館/博物館にて開催される巡回展”Hello, Robot”展に出展中。 ニューヨーク近代美術館、ベネチアビエンナーレ、ルーヴル美術館、パリ装飾芸術美術館等でロボットの展示も実施。 iFデザイン賞(ドイツ)red dotデザイン賞(ドイツ)など受賞多数、日本大学藝術学部客員教授、グッドデザイン賞審査委員(2007年から2014年)。


