【連載】心を動かすgoen°のデザインvol.2 正しく受け取り、次の人に渡す

Apr 06,2018interview

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Apr06,2018

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【連載】心を動かすgoen°のデザイン vol.2 正しく受け取り、次の人に渡す

文:
TD編集部

アートディレクター・森本千絵さんへのインタビュー第二回。念願叶って広告代理店に入社した彼女の最初の配属先は、グラフィックデザインではなくなんとCMの部署だったという。しかし、その時の経験がなければ「今の自分はない」と語る森本さん。その真意とは。

音、映像、1枚の絵とグラフィックデザインを融合させる世界

グラフィックをやりたかった森本さんにとって、CM部署での3、4年は一見、遠回りだったように見えますが、当時を振り返ってどう感じますか。

もしも最初からグラフィックの部署に配属されて、Macに向かって用意されたテーマのデザインをするところからスタートしていたら、今、私はこうなってないと思います。
スタート地点にあったのは、白い紙と鉛筆だけ。絵を描くことで映像を組み立てる、というのが私の社会人としての仕事の始まりです。

新人の頃はサウンドロゴを作っていたこともあるんですよ。
PlayStation2のCMで、最後の2秒間の音を、どうしようかと考えていました。
美大ではもちろん「音作り」なんてやったことがなかったから最初は戸惑いました。でもわからないなりに、「どんな印象を残したいか」を考え抜きました。それが、たかだか2秒間の音であったとしても。
色やロゴなど細かいところを丁寧に作り込んでいくと、メディアとして「効いて」くるもので……、そういった感覚を掴んできた頃に、Mr.Childrenベスト盤のポスターというグラフィックの仕事が舞い込んできたんです。
森本さんがプレステ2のCMに関わっていたなんて……!

音と映像。1枚の絵とグラフィックデザイン。今思えば、これらをうまく融合させる経験を博報堂時代の初期の頃から勉強させてもらえる環境に身を置くことができていたのだと思います。
全員がグラフィックデザイナーではない、それぞれが特殊技能を持ったCMの部署にいたからこそ、いろいろな問題の解決方法を学べた気がします。
「伝える」方法は、実はたくさん存在します。その中から一番伝わる方法を探し、工夫するのがデザイナーなのだと実感しましたね。

森本さんの著書(中央)と、森本千絵特集の時の雑誌『pen』(右)。
今回お話しいただいた博報堂時代のエピソードも多数収録されている。
『SWITCH』2017年6月号(左)では、Mr.Childrenボーカルの桜井和寿氏へインタビューも。

正しく受け取り、次の人に渡す

森本さんが考える、デザイナーに必要な力とはなんでしょうか。

コミュニケーションを重視することじゃないですかね。仕事は必ず1人以上でやるものなので、そこが一番難しい。
キャリアに関係なく、社会人1年目でも10年目でも、きちんとコミュニケーションをとるというのは実は大変なことです。

なぜコミュニケーションがそこまで大切なのでしょうか。

そもそもデザインとは「問題を解決すること」だからです。
何を伝えたいのか、何を解決したいのかを深く理解していないと、伝わるものは作れません。
違う見方をすると、デザイナーの仕事は「(依頼を)正しく受け取って、次の人に渡す」こととも言えます。受け取り方を間違えると、違うことを伝えてしまいます。

まずは伝えたいものの設計図が最初に生まれるべきで、単にカッコイイとか見た目がかわいい、というだけで済ませてしまうのは、本質的な意味で「デザイン」ではありません。たまに包装紙のような表層的なデザインを目にすると、とても残念な気持ちになります。

それが美大の課題であっても仕事であっても、コミュニケーションをきちんととって、何を伝えたいのか、何を解決したいのかを考え抜き、問題と向き合うことで、きっと良いデザインが生まれると思います。
そのプロセスにおいてコミュニケーションは必須。ですからデザイナーにとって、コミュニケーション能力が非常に重要なんです。

ありがとうございました! 次回はいよいよ最終回。独立のきっかけから最近の取り組みまで、お伺いしていきます。

※次回『心を動かすgoen°のデザイン vol.3』は4月13日(金)の更新予定です。

森本 千絵(もりもと・ちえ)

1999年博報堂入社。 オンワード樫山、Canonなどの企業広告、松任谷由実、Mr.Childrenなどのミュージシャンのアートワーク、映画・舞台の美術、動物園や保育園の空間ディレクションなど活動は多岐に渡る。 伊丹十三賞、日本建築学会賞、日経ウーマンオブザイヤー2012など多数受賞。

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