【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上vol.3 学生時代の海外インターンを薦める理由

Jul 28,2017interview

#Goodpatch

Jul28,2017

interview

【連載】グッドパッチが挑む、デザインの社会的価値の向上 vol.3 学生時代の海外インターンを薦める理由

文:
TD編集部

グッドパッチ創業者の土屋尚史氏へのインタビュー。最終回は、これからデザイナーとして活躍したい若手層に対するメッセージを中心に聞きました。未来のモビリティに対する期待についても語っていただいています。

プロマネもできるデザイナーが海外にはゴロゴロいる

さきほど「視野を広げる」というお話がありました。その点についてもう少し伺えればと思います。

デザイナーたちが抱える課題感の中に「視野が狭い」というのはあると思っています。グッドパッチでは、もともとデザイナーだった人がプロジェクトマネージャーになったり、もともとプロジェクトマネージャーだった人がデザイナーになる、というパターンも頻繁にあります。
例えばロンドン発のデザインスタジオustwoでは、プロジェクトによって役割を柔軟に変更していますね。デザイナーだけどプロジェクトマネージャーをやってたりとか、プロジェクトの中にプロジェクトマネージャーがいないときは他のデザイナーがファシリテーションしたりとか。

すごいですね……! 下世話な話なんですけど、そういう人たちってどれぐらい稼ぐんですか。

普通に物価の違いがあるので一概に言えない部分はありますが、シリコンバレーの第一線で活躍するUXデザイナーになると、年収2000万円以上の人も相当な数いるそうですよ。

そもそも、「デザイナー」という職業に対する認識が違うのかもしれませんね。

そうですね。日本では、プランニングを誰かがやってそれを形にすることをデザインということが多いのですが、日本以外ではそれをデザインとは呼びません。クライアントと議論をして課題を分析したり、プランニングしてそれを形にするまでがデザイナーの仕事です。
私たちはデザインを適切に理解しているデザイナーを世の中に増やしていきたいと思っています。ですから、自社の採用には力を入れていますが、ずっとグッドパッチに居続けてもらう、ということは重要視していません。

グッドパッチで働き続けてくれるのはありがたいですが、グッドパッチを卒業して色々な場所で活躍してもらった方が、世の中にはいいデザイナーが確実に増えると信じていますから。

スマートフォンとクルマの連携

最後に、将来のモビリティや車のデザインについて伺いたいです。もしかすると畑違いの分野の話になっちゃうかもしれないですけど、逆に、だからこそ土屋さんが思うところみたいなことがあればお伺いしたいんですが。

家族と出かけるときには車に乗っていますし、車はもともと好きですよ。ここから数年とかの話でいくと、やっぱりスマートフォンなどとの連携が楽しみですよね。
パーソナルデータがアプリなどに入っていて、車のコンパネにセットしてBluetoothで全部起動したらあらゆるものがつながっていて、ドライバーの好みに合わせて自動調整してくれる、情報を提供してくれる、みたいな……。シートの位置やハンドルの位置もスマートフォン端末に記憶させたりとか。
そういう時代が来るだろうなと思っています。

土屋氏の話す「未来」はもうすぐそこまで来ている。ドイツAudi社が2017年5月17日に発表したのは「Android OS」を使ったコンセプト、「Audi Q8 sport concept」だ。ダッシュボード中央の大型ディスプレーで動画ストリーミングサービスの「Spotify」や「Google Play Music」「Google Assistant」などを利用できる。こういった事例は急速に増えていきそうだ

それからスマートロック。ドライバーがクルマから離れたら自動的にロックする機能とか。
キーをポケットから取り出してピピッとやる、あの動作すら面倒くさいですから、基本的にはスマートフォンを取り出してポケットに入れて、しばらくしたらガチャッと締まってほしいわけです。
コンセプトカーにあるような、近未来的な感じには今はあまり興味はなくて。自動運転も、当然完全自動運転になることはしばらくはないだろうなとは思ってるので。単純に車のマップアプリケーションの使い勝手を向上してほしいですね。

Google社が今年5月に発表した、Volvo社との技術連携。実のところ、スマートフォンのGoogleマップをカーナビ代わりに使用しているというユーザーも多いのではないだろうか(by TD編集部)
UI/UXを専門とする土屋さんならではの観点ですね。ちなみに好きな車はありますか。今お乗りの車とか。
好きな車はAudiですね。僕にとって、やっぱりAudiの印象は『アイアンマン』。
昔はそこまでクールなイメージはあまりなかったと思うんですけども、相当変わったと思うんです。
でも、それも全部多分、デザインの力だと感じますね。UXの視点でいうとレクサスが好きですね。スマートフォンとの連携具合でいってもレクサスのほうが良いと思っています。
ただ、今は日本で販売してませんが、欧米で発売されているAudi Q5は恐らく相当改善されてるはずなんです。
レクサスよりもよくなっている可能性もあるんじゃないかと、期待しています。
 ありがとうございました。

読者プレゼントをもらったよ

今回の連載にあたり、TDの読者にプレゼントをご提供いただきました。(広報の高野さん、編集部からの度重なるお願いに快くお応えいただき、ありがとうございました!)
Prott ノート – Prott Sketch Bookと、ロゴステッカーのセットを3名の方にプレゼントします。
ご希望の方はTDのFacebookページに「いいね!」をしていただき、Facebookページまたは当サイトの問い合わせページから送付先住所とお名前を添えて感想をお寄せください。当選結果の発表は発送を持って代えさせていただきます。

土屋尚史(つちや・なおふみ)

株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 / CEO 1983年生まれ。Webディレクターとして働き、サンフランシスコに渡る。btrax Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験し、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。 UIデザインを強みにしたプロダクト開発でスタートアップから大手企業まで数々の企業を支援。 2015年にベルリン、2016年には台北に進出。 自社で開発しているプロトタイピングツール「Prott」、フィードバックツール「Balto」はグッドデザイン賞を受賞している。http://goodpatch.com/

この記事を読んだ方にオススメ