【連載】根津孝太さん、「いいデザイン」って何ですか?vol.3 アイデアを引き出すコミュニケーション

Nov 29,2017interview

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Nov29,2017

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【連載】根津孝太さん、「いいデザイン」って何ですか? vol.3 アイデアを引き出すコミュニケーション

文:
TD編集部

全3回でお送りする根津孝太さんインタビュー。最終回となる今回は、会議をクリエイティブにするコツについてお話を聞きました。「マーケティング担当からムリな要求がきた」というデザイナーとしては「あるある」な状況も、根津さんはクリエイションのヒントにしてしまうそうです。

「素直」こそが最強キャラ

ミニ四駆や電動バイクのデザインって、デザイナーならきっとたくさんの人が手がけてみたいお仕事じゃないかと思うんです。根津さんは、面白そうな案件やプロジェクトを引き寄せる力があるように感じます。

大体、直感で動いていますが、ご縁は信じています。ミニ四駆は工場見学に行ってたまたま田宮会長に出会ったところからはじまりましたが、あのときも本当に偶然で。
タミヤの工場見学、ずっと行きたいなと思ってたんですけど、それまで「大きいお友だち」はお断りだったんです。親子連れならOKなんだけど、うちの子は女の子なんで一緒に行ってくれなくて。それが大人もOKになったので張り切って出かけたんです。

そこにたまたま田宮会長がいらしたんです。自分にとっては伝説の生き物みたいな存在ですから(笑)、話しかけずにはいられなくなって。それでzecOOを見ていただいたら、「面白いね、ミニ四駆のデザインをやってみない?」っていう話になって。そんな流れなので何か企んでいたわけではありません。でも、偶然のご縁というのは感じますし、そういうのは信じています。

田宮会長との出会いが縁でミニ四駆もデザイン。「アストラルスター」(左)と「ライキリ」(右)は、実際に人が乗れるプロポーションを持つカーデザイナーならではのデザイン。
そういうセレンディピティのような出会いって、受け取る側の態度も大切だと思います。どんなことを心がけているんでしょうか。

いつも思っているのは、「素直」って最強キャラだなということ。だからネガティブな意見言われたときにも、すごく素直に聞けるんです。もちろんヘコみますよ。でもそこで「だよねー」という反応をすると、批判している相手も変わるんです。

何か否定的な意見を言われたときに、ブワーッと言い返す人もいますけど、言い返したってしょうがないんですよ。だって、その人がそう思ったというのは事実だから。だからヘコみながらも受け止めて話を進めてみると、次のステップが出てきたりする、ということもあります。

逆にチャンスが来たときに、本当はやってみたいけど「俺なんかが行ってもな」と遠慮してしまうというのも、素直じゃないと思ってます。そこは素直にやればいいと思うんです。ドキドキしますし、「本当に俺でいいのかな」って思ったりもしますけど、そこは素直に「やりたいからやる」でいいかな、と思います。

個人で開発費を負担して作った電動バイク「zecOO」。2017年10月にはドバイ警察仕様がお目見えするなど、世界中からの注目を集めている。
根津さんは、もともと素直な性格だったんですか。

いや、違うんですよ。若いころは、すごい意地張って生きてました。トヨタでも、入社当時は「俺、クリエーターさまだぜ」、みたいな感じでした(笑)。でも、それって何も生まないと学んだんです。周りをよく見ればすごい人いっぱいいるなとか、この人の言っていることは実はその通りだな、とか気付いて。あれ、自分は一体何を守ろうとしていたんだろう、と。
トヨタで「愛・地球博」のプロジェクトをやったときに転機がありました。はじめは、ものすごく「守ろう」としてたんです。でも、守っていた内側に何もないな、と気が付いて。「あれ、守らなくていいんじゃない」って思った瞬間に、すごく楽になったんです。だから今は、いつもフルオープンです、僕。

そんな感じだから、悪意のある人にはすごい弱いんですよね。悪意を100パーセント受けちゃうので、いきなり、ザクッて切られて、うわってなるときもあるんですけど(笑)。でも不思議なもので、フルオープンでいくと決めてから、そういう人はあまり寄ってこなくなりましたね。

ありがとうございました。インタビューを終えて……、どんな場面でもより良いモノを作ろうと努力をいとわない根津さんの姿勢はインタビューのときでも同じでした。編集部の質問を真剣に受け止め、できる限り忠実に考えを伝えようとしてくださった点が印象的でした。短い時間でしたが、「根津流のモノ作り」を垣間見ることが出来たような気がします。

読者プレゼントのお知らせ

今回の連載にあたり、TDの読者にプレゼントをご提供いただきました。

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根津 孝太(ねづ・こうた)

1969年東京生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業。トヨタ自動車入社、愛・地球博『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。2005年(有)znug design設立、多くの工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、ものづくり企業の創造活動の活性化にも貢献。「町工場から世界へ」を掲げた電動バイク『zecOO』、やわらかい布製超小型モビリティ『rimOnO』などのプロジェクトを推進する一方、トヨタ自動車コンセプトカー『Camatte』『Setsuna』、ダイハツ工業『COPEN』、THEMOS ケータイマグ『JMY』『JNL』『JNR』、Afternoon Tea ランチボックス『LUNCH WARE』、タミヤミニ四駆『Astralster』『RAIKIRI』などの開発も手がける。ミラノ Salone del Mobile "Satellite"、パリ Maison et Objet 経済産業省 "JAPAN DESIGN +" など、国内外のデザインイベントで作品を発表。グッドデザイン賞、ドイツ iFデザイン賞、日本感性工学会 かわいい感性デザイン賞 最優秀賞、JAPAN WOOD DESIGN AWARD 最優秀賞(農林水産大臣賞)、JIDA MUSEUM SELECTION、他受賞。2014~2016年度 グッドデザイン賞審査委員。 http://www.znug.com

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