共感が世の中をドライブする時代。意識を向けるべきは「他力」
「適切に説明できる」というのはすごく大事なことだと思います。特に、デザイナーは形を扱いますよね。この「形」というのは、周囲との関係の裏返しだと僕は考えています。
例えばコップの形を考えてみてください。コップは、液体を口に運ぶために適切なサイズ、カーブ、作り方でないといけません。当たり前のことですが、これらをすべて形から読み取ってもらうのは難しい。形の中に全部書き込むわけにはいかないですから。
ひとりで作れるものだったらいいんです。デザインを見せて、使ってもらって、「使いやすかった」「こんな風に使われた」という反応をもらって作っていける。ところが今の時代は、以前とは大きく変わってきています。SNSに象徴されるように、共感が世の中をドライブする時代になってきているんですね。世の中の有象無象のクリエイティブが、ある種の方向性を持ってすごく強いクリエイティブになるかもしれない、という可能性を持っている。要するに、いかに世の中の他力を借りるかがすごく大事な時代なんです。

現代のデザイナーは、世の中に対して意味をきちんと提示しながら尖っていくというバランスが必要だと思います。そうすることで「社会の様々な側面に関われるデザイナー」になれる。単に尖ったものを作るだけでは足りません。デザインを機能させるという自覚が乏しいと、デザインが重要と叫ばれる時代であったとしても、その意味もぶれてしまいます。
もう一つ、「答えのクオリティよりも、問いの強度を高める」視点のクリエイティブの話が、今盛んにイノベーションやデザインのフィールドで言われています。
はい。コンセプトというのは、言い換えれば「どういう関係性を作るか」ということです。つまりデザインよりも、広い意味でのUI(ユーザーインターフェイス)が大事だし、UIよりもUX(ユーザー体験)のほうが大事だという話です。僕はこれを、デザインの壮大な回帰運動だと捉えているんです。


