【連載】社会を変えるNOSIGNERのデザインvol.2 独創的なアイディアを生む思考プロセス

Jun 16,2017interview

#NOSIGNER

Jun16,2017

interview

【連載】社会を変えるNOSIGNERのデザイン vol.2 独創的なアイディアを生む思考プロセス

文:
TD編集部

「ソーシャルイノベーションのためのデザインファーム」を掲げるNOSIGNER、太刀川瑛弼(たちかわ・えいすけ)さんのインタビュー。連載2回目となる今回は「問いの立て方」「アイディアの発想法」、そして「仕事を選ぶ基準」まで、率直に聞いてきました。

凝り固まった部分を見つけ出すために問いを「拡大」する

 どこに向かって石を投げるか、というのはどんな思考プロセスを経て決めているのでしょうか。何が凝り固まっているのを見いだすところまでが問いなんだと思いますが、どうやってそこにたどり着くのでしょうか。
「問いを拡大していく」と僕はよく表現するんですが、クライアントと話すとき最初に求められるのは「売れますか」なんです。もちろん売れないと続けられませんから、それは必須なんですが、そのときに僕はあえて「社是」まで戻ったりします。なぜこの事業をやっているのか、なぜこの会社があるのか、といった根本の部分です。
 意図的にそこまで戻っていくと、どの会社も大抵、事業理念はすごくいいことを言っているんですね。個人的、事業部的な欲を超えたことが書いてあります。だからこそ何十年も商売が続いてきたわけです。だとしたら、売るためにはその事業理念にのっとってやる必要があるんです。
個人的な欲を越えた事業理念こそ、企業が続いてきた原点。
そこまで立ち返って徹底的に考える
 そこまで戻るんですね。

 一方で、コンテクストにも戻ります。これまで色々な製品が出てきた中で、その製品はどういう意味があるのか、という文脈ですね。だから周辺リサーチもするんですが、周辺に勝つためにやるのでは無く、新しい文脈を作るためにプロジェクトをやるという意識でやっています。

なるべくその領域全体にとっての進化は何だろうか、という風に考えるようにしています。多くの場合、プロジェクトの周りに流れる文脈が、断絶しているんです。そのために、そのプロジェクトだけでなく、その領域全体が本領を発揮できていない。例えば、友人のイノベーションコンサルタント、佐宗邦威くん率いる株式会社biotopeと一緒に、お茶と海苔の老舗である山本山さんのプロジェクトをやらせていただいています。山本山11代目の山本奈未さんを中心にロゴからパッケージから、それこそ全体のデザインの見直しをやっているんですが、そこでは「どうやったらお茶が流行るのか」という議論をします。

山本山のプロジェクトならば、「どうやったらお茶が流行るのか」の議論から始める
「お茶の流行らせ方」を考えるんですか。山本山のブランド、ではなく。

 そう。例えばある領域全体が縮小しているときに、じゃあどこだったらもう一回価値になり得るのかという可能性を考えて、領域をもう一度定義し直します。そしてその領域の価値そのものを語れるようなブランドに再定義していくんですね。お客さんが製品を手に入れることによって、その領域の魅力に気付く、そんなブランドにできれば、すごく強力だと思っています。

 でも、それってデザイナーの仕事なんでしょうか? だいぶマーケティングに踏み込んでいるような……。

でもそれをやらないと、本当の強度のあるブランドにはならないんです。だから、お茶を流行らせるためにどういう仕掛けが必要なのかをまず考えるわけです。

今世の中に存在する商品は、いつか寿命を迎えてしまう。そのときには別のものにとって代わられます。

そこで「どこだったら長く残る価値になり得るのか」を考えつつ、ブランドの価値と、その領域そのものの価値を対比しながら「その領域の価値そのものを語れるようなブランド」に再定義していく、ということなんです。

結果的には「それを使うことによって、あるいはそれを手に入れることによってその領域に関わる接点が増える」ということに大きな意味がある。その領域の魅力に気付いて、もしかすると他社のものを買うかもしれないわけですけど、その領域との接点が増える。でもそういうことを踏まえてブランドを定義していけるとすごく強力だし、その繰り返しが文化をつくることだと思っていて。

 山本山のお茶だけにとどまらず、「お茶領域全般が盛り上がるようなブランド定義」を山本山で行う、ということですか。深い。深すぎる。

 そう。だからその周囲に流れているはずの可能性とそのブランドをどう接続し直すかっていう問いに対する答えは、そのブランド単体の話じゃなくて、その領域そのものの話であることが多いんですよね。

327年の歴史を持つ山本山とともに生み出したのは「お茶領域全般が盛り上がるようなブランド定義」
独創的なアイデアを生むための思考プロセス

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