クルマは家の拡張か、それとも身体の拡張か
自動運転が進むと、普通に考えると内側が強くなるんだろうと思います。居住空間をより優先して、インテリアが外に表出してくるような。
でも同時にその市場だけが残っていくかっていうと、そうでもないのかなと。自動車って、外からの流れに忠実に作る方が筋肉質に見えます。流線型のほうがスピード感も感じますよね。クルマを愛する人たちにとっては、そういう形状はすごく魅力的です。
クルマを身体の拡張として考えると、どういう風に身体を表出させたいのかということと、すごくつながっているな、と思うんです。すごく極楽な生活ができれば外見はあまり気にしなくていいのか、ストイックに自分を鍛え上げることでかっこよくなりたいのか。

だから、その人がどういうコンセプトでクルマと向かい合いたいのかによって、今よりもっと二極化が進むんじゃないかと思うんですよ。今も二極化していますけど。
例えば、ミニバンのような車を開発するんだったら、もっともっと振り切って、居住空間を外に表出していくようなことを考えていいと思うんです。今だと、外からのストリームラインをちょっと取り入れたミニバンみたいなクルマが多くて、デブなスポーツカーみたいになってますけど。でもそれは、スタイルが悪いのにイタリアのスーツに身を包んでいるみたいな感じで……(笑)。そういうスタイルが本当にすてきに見えているのかというと必ずしもそうではないですよね。
それならいっそのこと、昔のフォルクスワーゲンのバンのようなスタイルのほうがすてきだったりするじゃないですか。キャンピングカーのエアストリームとか。銀色の。何十年も前にデザインされたものがいまだにかっこいい、というのはある意味すごく残念ですよね。あれは居住空間100と割り切っているからかっこいいと思うんです。そういった割り切りが、もっと必要じゃないでしょうか。
一方、身体の拡張っていう捉え方でいくと、エンジンがなくなって電気になり、バッテリーが進化すれば、ミッドシップスポーツみたいなフォルムをもっと作りやすくなるはずですよね。エンジンルームが無くなれば、オープン4シーターなのに、2シーター並みに美しいクルマなんかもできます。例えば先程のXJ13がもっと流線型になって、EVで、4人乗れるみたいなイメージのもの。ストリームライン100の方向性ですね。そういうFun to Driveを追求する方向性も、もうひとつ可能性としてあると思うんですよ。

居住空間重視型を「家の拡張」だとすれば、ストリームライン重視型は「身体の拡張」と言えるかもしれません。
オープン4シーターは、日常生活におけるいろんなことを「諦めなくていい」んですよ。スタイルはかっこいいし、友達も乗せられるし。
海外でこういうスタイルが受け入れられやすいのは、休日に家族と豊かな時間を過ごすためのベストチョイスだからなんです。開放的な状態でビューンってドライブに行けて。実用性もあって。もっと人気が出てもいいと思うんだけどなぁ。

ですね。でもお父さんの気持ちをギリギリ満足させつつ、お母さんを説得できるのはオープン4シーターだと、僕は思ってる。これは完全に僕の趣味の話なんですけどね(笑)。そうそう、いつかの調査で読んだところ、後悔しなかった車選びランキングの第1位がC70だったんです。
オープン4シーターって後悔しないんですよ。例えば子どもが生まれても買い換えなくていいし。日本で流行らないかなあ。


