子どものためのデザインだけど、子どもに媚びるデザインじゃない。 意外と深かった「キッズデザイン賞」の世界

Jul 22,2017report

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Jul22,2017

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子どものためのデザインだけど、子どもに媚びるデザインじゃない。 意外と深かった「キッズデザイン賞」の世界

文:
TD編集部

「子どもたちの健やかな成長・発達」につながる幅広いモノ・サービスを対象に認定される、「キッズデザイン賞」。TDでは2017年度の同賞を追いかけていきます。

ただ可愛いだけじゃダメ。キッズデザインはこんな指標で評価される

キッズデザインを評価するにあたっての評価指標も用意されています。これまでの受賞作品や専門家の意見をもとに「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン『7つの視点』」として、同協議会は以下のような指標を提案しています。
・新しい発見
・取り込む/組み合わせる
・知の探索
・直感的な美しさ
・素材を感じる
・動きの誘発
・共感・共創

白梅学園大学 教授であり、教育心理学者である無籐 隆氏(キッズデザイン賞 副審査委員長)は同協議会のウェブサイトで以下のようなコメントを寄せています。

デザインを、「子どものため」と「子どものもの」と「子どもが作り出すもの」とに分けると、そのどれもが必要であり、重ねていくことに創造性発揮のためのキッズデザインの未来があるのではないでしょうか。子どもの楽しさと成長に役立つことと、子どもが思いきりその発想を広げて使える自由度の大きさと、さらに子どもが自分の力で道具や遊具や場そのものを作り出し、それによりさらに活動を進められることです。Design for Kids, of Kids, by Kids を作っていきましょう。この「7つの視点」はそんなキッズデザインを発想する一つの手がかりとなるのではないでしょうか。

アカデミックなアプローチも面白い

キッズデザイン協議会では「こどもOS(オペレーティングシステム)」の研究という取り組みも推進しています。同NPOが発行する『こどもOSランゲージ-こどもから学ぶ・おとなが変わる-』という冊子では、建築家クリストファー・アレグザンダーの名著『パタン・ランゲージ』からヒントを得て、こどもOS研究会のメンバーが22の「こどもの特徴的な行為」を集めて共通言語「こどもOSランゲージ」としてまとめています。

 

例えば、「対岸へ」

溝や階段などの凸凹を見つけて飛び越える。常に身の回りの環境を利用して、自らの成長を確かめる。(中略)こどもにとって、しっかりとした石のベンチは恰好のジャンプ台となる。とんだ先に対岸という目標があれば、飛躍は能力の限界を確かめるためのチャレンジに変わる。

「揺れるもの」

ひもの先におもりがついたようなモノがあれば、大きさに関係なく、こどもは揺らしたくなる。(中略)神社の拝殿に下がる鈴緒は、こどもにとって魅力的な遊び道具である。神聖な場所だが、遊びの誘惑にかられる。二つの鈴緒が垂れ下がっていれば、さらに、お互いをぶつけたり、絡ませ合ったりもする。遠心力や重力、振り子のように繰り返す周期を楽しむ。

このようなこどもの行動パターンをもとに、デザインのヒントになるようなキーワードやこどもの安全のための注意事項も提案しています。子育て中の方や保育に携わる方にとっては「あるあるあるある!!!」と何度も頷いてしまいそうな内容が盛りだくさんです。

 

また同研究会は、カイヨワチクセントミハイ小川純生らの既存研究から共通点を抽出し、こどもOSランゲージで活用できる9つのキーワードとして統合しています。 具体的には「競争(アゴン)」「運(アレア)」「模擬(ミミクリ)」「眩暈(イリンクス)=眩惑」「創造」「コントロール=創造」「コミュニケーション=共鳴」「理解=探求」というキーワードが提案されています。 このキーワードを活用しながらこどもの「遊び」や「行動」をとらえていくという試みを行っています。

この冊子のサブタイトルにあるとおり「こどもから学ぶ・おとなが変わる」というのがこの取りくみの狙いの一つ。こどもが持っている感性をデザインに活かす、キッズデザインによる新たなデザイン発想法を提案しています。冊子に書かれた内容を以下に引用します。

こどもの行動を観察し、新たな発見をする。そこに価値を見出し、開発のヒントとする。さらに、こどもがどのように反応するかを予測してみる。おとなは、おとなの中のこども性を解放し、おとな、あるいはこどもとともに、その姿勢を評価していく。

この冊子はカードとセットで購入することができるそうです。ご希望の方はキッズデザイン協議会にご連絡ください。デザインに携わる方々にとって、ハッとさせられることもたくさんあるのではないでしょうか。

10項目の「キッズデザイン宣言」が加わり、受賞作品の見方も変わるかも?!

キッズデザイン賞。少し覗いただけでもなんだかすごーく深いテーマが見えてきてしまいました。 「お前が深淵を覗くとき、深淵もまたお前を覗いているのだ」とおっしゃったのはニーチェ先生でしたでしょうか……。 ということでTDでは今後も引き続きキッズデザイン協議会の取り組みを追いかけていきたいと思います。

今年度の取り組みとして、同協議会は10項目の「キッズデザイン宣言」を決定しました。

すべての子どもは社会の宝であり、未来そのものです。

キッズデザイン協議会は社会の変化を敏感にとらえ、
さまざまなステークホルダーとともにオープンイノベーションを起こし、
その未来が持続的で明るいものであるよう行動します。

1.出産、育児と働くことがどちらも喜びであるよう、考え、実践します。
2.子どもと過ごす時間が豊かなものであるよう、行動します。
3.子育てに関する情報へのアクセスをわかりやすく、容易にします。
4.子どもとともにいつでも、どこへでも外出したくなる環境をつくります。
5.子育てする人すべてが交流と支援を享受できる場づくりをサポートします。
6.コミュニティが支える子育ての大切さを共有し、その支援を行います。
7.地域と社会の若者や高齢者と、子どもが接する機会を増やします。
8.子どもにとっての遊びと学びの普遍と変化を研究し、開発し、実践します。
9.子どもが自発的、継続的に体験、経験を積める機会をたくさんつくります。
10.不慮の事故による子どもの犠牲をゼロにする努力を継続します。

――キッズデザイン宣言

一見デザインとは直接関係が無いように見えるこれらの宣言は、裏を返せば「デザインで世の中のここを変えられる!」という意気込みではないでしょうか。この宣言に込められた想いが受賞作品から透けて見えることを期待しています。

本記事公開日現在、作品の審査中で、受賞作品は8月21日(月)に、最優秀賞・優秀賞などは9月25日(月)にそれぞれ発表されます。
TDでは受賞作品を取り上げ、そのデザインが生まれた背景やこだわり、そしてデザインに携わった方々の想いなどに深く迫っていく企画を予定しています。どうぞお楽しみに!

※キッズデザイン賞についてのより詳しい情報はこちら

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