超小型EVコムスはデザイン・設計・営業が一体で生み出した「新しい乗り物」だった!

Nov 30,2018report

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Nov30,2018

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超小型EVコムスはデザイン・設計・営業が 一体で生み出した「新しい乗り物」だった!

文:
TD編集部 出雲井 亨

トヨタ車体が手がける超小型EV、コムス。実際に乗ってみて、その予想外の快適さと爽快さ、そして楽しさにびっくりしたのは前回の「試乗レポ」でお伝えしたとおり。今回は、開発・営業チームへのインタビュー。ユーザーの声からデザイン秘話まで、「中の人」に語ってもらった。

三角形の台座にカプセルをのせた

続いてコムスのデザインについて教えてください。金高さんはコムスのデザインを手がけられたんですね。

金高:私は当時デザイン部に在籍しており、コムスの外形デザインを担当しました。まず全体のフォルムとしては、コムスは、タイヤの付いた台座にカプセルを乗せたようなイメージになっています。このコンセプト自体は小さな乗り物としては珍しいものではありません。

その中でコムスならではの特徴は、まずカプセルをウェッジさせている(前傾させている)点です。コムスはパッと見はコロッとしてかわいらしいんですが、その中に精悍さも持たせたかったんですね。そこで自動車のデザインにもよく用いる手法ですが、カプセルをぐっと前に倒すことで、勢いを表現しています。

コムスのスケッチ。カプセルを「前傾」させているという特徴がよくわかる。

もうひとつの特徴は台座部分にあります。上から見るとわかるのですが、台座部分を前にいくに従って絞っているんです。
これは乗り降りのためです。コムスは配達で使う方も多く、乗り降りが頻繁。だから左右どちらからでもさっと足を出して降りられるように、台座を三角形にしました。

上から見ると、台座部分が三角形になっている(意匠登録の図面に加筆)
確かに、上から見ると三角形ですね。
コムスを見たときに前後のタイヤが張り出していてスポーツカーのようだなと思ったんですが、こんな秘密があったんですね。

前を絞ることで前進感がでて、全体の抑揚もついています。そのなかで、面質にも気を遣いましたね。いかにさっぱりした面にするかにはこだわりました。
一般的に自動車のデザインは、面をつまんで抑揚をつけたりしますが、あまりそういう考え方はしなかったです。

クルマのデザインではライバルをベンチマークとして研究したりもするんですが、コムスに関しては、そういうことはほとんどありませんでした。
むしろクレイモデラーさんと話すときに使ったのは、こんな本です。(子ども向けの電車の本を取り出す)

おー!

こっちがライバルだよね、と。コムスはパブリックな存在でもあるので、そういう意味で電車との共通点もあります。だからモデラーさんと「どんな面質にする?」なんて会話しながらクレイモデルをつくっているときは、そういうプロダクトを意識しながら進めましたね。
(筆者注:このとき開いていたのは、JR九州の883系ソニック885系かもめのページ。確かにどことなく雰囲気が似ているかも)
バイクの爽快感とクルマの安心感を持つ、まったく新しい乗り物というコンセプトなので、あえてクルマではないデザインを狙っていきました。

最終スケッチの1枚。この絵を元にクレイモデルが作られた

そしてファイナルはこの手描きのスケッチです。これをもとに、クレイで形をつくっていきました。あえて手描きにした理由は特にないのですが、ここから読み取ってもらうのが一番ニュアンスが伝わりやすいかな、と。

私は以前、EDスクエア(フランス・ニースにあるトヨタのデザインスタジオ)に1年半ほど行っていました。むこうのデザイナーは、各自絵のスタイルが確立して、みんなすごくうまい。そんな中、私も原点回帰し、改めてマーカーで描くきっかけになりました。
枚数を描くにも、やっぱり手描きが一番早いですしね。たぶん100枚は描いたかと思います。

デザインを手がけた金高充志氏
デザインする上で印象的だった点はありましたか。

普通の乗用車ですと、クルマの要件は決まっていて、そこにデザイナーがいろいろ案を出して成立するかを検討したりしますが、コムスはすべて社内で完結する社内プロジェクトというのが大きかったと思います。
最初から営業、デザイナー、設計者、生産技術者などが集まって進めたんですね。ですから、機能や使い勝手について実験を重ねながら、デザインも設計も一体になって決めていくことができました。

街に溶け込むコムスのデザイン

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