「活気のない百貨店」と「想いのこもった専門店」の違い
企画する上でのルールとか、ターゲットのイメージなどはあるんですか。
ないですね。先ほどの話でも出ましたが、最近は「自分が楽しいと思うかどうか」を一番大切にしています。お客様はきっとこれを楽しいと思うだろうな、自分も面白いと思うだろうな。そんなイメージが浮かべば、やります。
ただ、ルールとまでは言いませんが、クルマやバイクの知識量で勝負する気はありません。クルマに詳しい人は星の数ほどいますから。
じゃ自分たちがやることは何だ? というと……僕たちの場合は、「場の提供」なんですよね。

店内を見渡せば、様々な売り物があります。本があって、グッズがあって。ここはそれらを組み合わせることができる数少ない場所であり、それが僕らの強み。
モーニングクルーズをきっかけとしてクルマを集めて、時には企業さんにも協力してもらいながらフェアを作って、見てもらって、トークイベントをやって……。その一連の流れの中でお客さんに楽しさや、気付きや驚きを持ち帰ってもらう。その場を提供しています。
ただ、そこでどんな風に楽しんでもらうかは基本的にお客様任せです。私たちからも提案できれ
モーニングクルーズはその代表的な例ですね。毎回様々な化学反応が起きていて、だからこそ続いていると思います。お客様とスタッフが一緒に場を育てていく楽しさがあることが、コミュニティとして続く秘訣なのではないでしょうか。
一つ言えるのは、「活気のない百貨店」と「想いのこもった専門店」の違いに近いのかな、と。もちろん全部がそうだとは言いませんが、モノがたくさんあっても活気がないお店って、スタッフが立っていても「いるだけ」なんです。
商品が置いてあって、スタッフもいるだけ。そうするとお客様には何にも伝わりません。どんなに品揃えが良くて魅力的な商品を陳列しているところでも、「モノがあるだけ」「人がいるだけ」の場ってなんだか楽しくない。必要最低限のものは買うけど、ただそれだけ。
一方、想いのこもった専門店には、商品だけじゃなくて、提案がある。そこが境目じゃないですか。「なるほどな」とか「どういうこと?」とか、感情が動くわけです。それがあるかどうかが、大きな差につながると思います。

選書に当たって心がけていること
信頼関係はあると思いますね。普通にお客様とメシを食いに行くこともあります(笑)。これは単に、クルマ好き同士としてですが。
僕は和書を担当しているんですが、全部を揃えられるわけではないので「クルマ好きの人が読んでも面白いと思えそうかどうか」をイメージして選書しています。「売れ筋だから入れる」という判断はしていません。だからクルマの本ならなんでも揃っているようでいて、扱ってないものも多いです。
例えば『痛車』や『レースクイーン』。
一つのクルマの楽しみ方だと思うんですが、うちだと提案ができない。この売り場にあっても、正直、売り場の中でまとめられる自信が自分にはない(笑)。


