デザインやスタイリングは、もう話題に上らない
クルマ系はいまや、スタイリングの話題よりももっとすごいトピックが出てきていますからね。「ソフトウェア」「人工知能」「ディープラーニング」「自動運転」の話がほとんど。あとは「5G」とか。
もうすぐ来る自動運転の時代には車そのものがスマートフォンと一緒になってきます。コンポーネントもモーターも共通化されてモジュール式になる。
実際、いまクルマの話題で出てくるのは「NVIDIA」「Intel」「Qualcomm」などのソフトウェアの会社ばかりですね。
そうそう。自動車メーカー社内のR&Dよりもさらに先進的なものが、毎年CESなどで出てきてしまう。こういう社会や技術の流れに関する知見は、クルマに限らず全てのデザイナーが持つべき時代になっていると思います。



イノベーション連発時代のデザイナーに求められること
はい。日本がインダストリアルデザイナーをグラフィックデザイナーときっちりと分けていた時代って、効率化すれば利益が上がる時代だった。
逆の言い方をするとイノベーション停滞期だったんですよ。
今のようなイノベーションが連発している時代に、「この部分しか知りません」っていうのは、事業を立ち上げようとするときの人材としては役に立たないと思います。
いまは手先よりも知恵の総合力みたいなのが価値として高いんです。
実際、コンセプチュアルなことを言う人が注目されていますよね。何かを実現していくための「視点」がデザイナーとかクリエイターに求められる時代になってきていると思います。
日本について言うのであれば、これから国の法制度の整備がどれくらいできるかが今後の自動車業界の発展に大きく関わってくるかと。
モビリティサービスも、もっと新しいものを生み出せそうですよね。今はまだまだ、モビリティが進化していった先にある「体験」とか「ビジネスのビジョン」があまり見えないと感じます。
アメリカだったら「テスラがオンラインサービスを始める」「Uberが自動運転で迎えに来る」みたいな未来も想像がつく。でも、日本ではあまりイメージできない。逆の見方をすると、日本独特のモビリティのサービスは考える余地があるかもしれないですね。
モビリティのビジネスを手がけている会社が「移動しなくていいものを作る」とか、それくらいの柔軟思考があれば良いかもしれない。
ね。例えばトヨタが「車に乗らなくてもいい生活」を提案し始めたら面白いと思いませんか。
車はあくまでも動けるから良いものであって、「今まで車が必要だったらシーン」を全部、車を使わなくてもいいように変えていきます、とか。
AppleがiPhoneを生み出して、iPodもパーソナルコンピューターも不要にしたように。
それくらいダイナミックなことができると日本は変わるかもしれないですね。
今の自動車メーカーは規模がとてつもなく大きいので、普通の企業はそう簡単には動けないですね。何かを大きく変えようとするには新しいベンチャーが出てこないと厳しいかも。
海外資本になっちゃいますが、WHILLとか面白いですよ。
日産のカーデザイナー、ソニー・オリンパスのエンジニア、と全員メーカー出身の人たちが立ち上げた車椅子の会社です。パーソナルコミューターはまだ伸び途中なので、もっと大きいモビリティで社会にインパクトを与えていくスタートアップが出てくると面白いですよね。


