市場の声を聞いて大幅チェンジしたデザイン
デザインは、FOMMの最初のターゲットであるタイの市場の声を聞いて決めました。もともと「カプセル」をコンセプトにしていたため、これまで作ったコンセプトカーは初代、2代目とも丸っこい形をしていました。ところがタイで人々の意見を聞いてみると、これがあまりピンとこないらしい。どうも、もっと未来的なデザインが好まれることが分かったんですね。そこでデザイン案を8案ほど作りまして、現地でアンケートを取って決めました。
「未来的」といっても、日本人が考える未来的なフォルムともちょっと違う。また女性と男性でも違っていたんですが、最終的にはどちらかというと男性的なデザインに落ち着きました。
これはカラーリングでも同じことがありまして、当初は白、黒、赤、黄色、青、シルバー、ピンクというカラー展開を考えていましたが、タイの人たちの声を取り入れて黒とシルバーをなくし、代わりに緑とオレンジを追加しました。

基本的にヨーロッパの小型電動モビリティの規格である「L7e」に沿って作っています。この規格が世界的に共通の規格になりつつあるためです。タイで新しくできた規格も、内容はL7eに近くなっています。

横幅1300mm、長さ2500mmというサイズは、1人乗りにすれば日本の原付ミニカーとして販売できるサイズです。
まずタイ向けに販売開始しますが、タイにはまだ電動モビリティがないので、市場がまったく読めません。そこで、タイで生産して欧州で売るパターンも考えましたし、日本でも展開できる設計にもなっています。
実際L7e規格だけであればもっと横幅を大きくできるのですが、これより大きくしたら車重450kgは達成できないので、現時点ではこれがギリギリのサイズです。
最初に決めたのはパッケージです。先ほど申し上げた通り横幅1300mmで長さは2500mm。高さは多くの立体駐車場に入るよう1560mmとしました。
またインホイールモーターによるフロントドライブということも決めていました。
旧型コムスはボディの骨格にアルミのラダーフレームを使っているのですが、これは非常に優れていたのでFOMMでも採用しています。
こういった基本的なパッケージを作り、それに合わせたエクステリアデザインを作っていきました。現在のFOMM ONEのデザインを作ってくれたのは(自動車のデザイン・開発・製作を手がける)MODIさんです。
フロントをよく見ていただくと、ライトとダクトの部分がFOMMのロゴの「F」の形になっているんです。またライト部分を黒くしているのは、歌舞伎の隈取りをイメージしています。

インテリアは、操作系にこだわりました。タイにはこのような電動モビリティがまだないですから、とにかく「乗りたい」「運転してみたい」と思ってもらえるようなデザインにしたいと考えました。そのひとつがハンドルの形状です。見慣れた丸いハンドルではなく、上下を削った未来的な形にしたのはそのためです。

実はこの形は副次的に衝突安全にも寄与しています。このクルマはJARI(日本自動車研究所)に持って行って50km/hでも衝突実験をやっているのですが、通常の丸いステアリングだと、上部に頭をぶつけてしまうんですね。ところがこの形にすると、ちょうどその部分がないので頭が当たらないんです。



